Kawai Project『ウィルを待ちながら 歯もなく目もなく何もなし』07/04-18こまばアゴラ劇場

 英文学者の河合祥一郎さんがご自身の新作を演出されます。上演時間は約1時間45分。

 題名から察するにウィリアム・シェイクスピアについてのお芝居で、ベケット作『ゴドーを待ちながら』が下地になっていそうですよね。河合さんは2016年に同劇場で『ゴドー~』を演出されています。

 戯曲は雑誌「悲劇喜劇」2018年7月号に掲載されています。劇場ロビーでも発売中。

悲劇喜劇 2018年 07 月号
悲劇喜劇 2018年 07 月号
posted with amazlet at 18.07.11
早川書房 (2018-06-07)


≪あらすじ≫ 公式サイトより
ウィルを待ち続けるふたりの役者。ふたりが口にするのは、シェイクスピア全40作品を網羅する名台詞の数々! シェイクスピア演劇の真髄に、ややベケット風に迫る新作芝居! 小田島雄志訳全作上演を達成したあのシェイクスピア・シアターの創立メンバーである田代隆秀と、『ゴドーを待ちながら』でエストラゴンを演じた髙山春夫が送る、メタシアトリカルな二人芝居。シェイクスピア研究者・河合祥一郎による書き下ろし新作。
≪ここまで≫

 序盤は、昔の海外古典演劇っぽい大仰なセリフ回しと動きに面食らいましたが、中盤以降は俳優2人の話だと受け取れて、清々しい気持ちになりました。題名通り『何もなし』なんですよね。俳優とは、人間にしかできない、尊い生き方だと思います。

 ここからネタバレします。

 プロローグは、間もなく開演というのに戯曲が全く書けないシェイクスピア(髙山春夫)を、俳優のリチャード・バーベッジ(田代隆秀)がせっつく場面でした。エピローグでこの場面に戻り、今まで上演していたものがシェイクスピアの新作だった…となります。『ウィルを待ちながら』は「ウィルが戯曲を書くのを待ちながら」の意味なのだなと思いました。

 車いすに乗ったサングラスの老人(田代隆秀)を、召使とおぼしき者(髙山春夫)が押していく演技が幾度か繰り返されます。歌やセリフから『リア王』のグロスターとエドガーの会話だとわかります。エドガーの話術で「ドーヴァーの断崖から飛び降りたのに奇跡的に生き延びたんだ」と、盲目のグロスターに思わせる場面です。繰り返しはいかにも『ゴドー~』ですね。

 田代さんは「隆(たか)さん」、髙山さんは「春(はる)さん」というニックネームで、お互いを親しみを込めて呼びあい、俳優ご本人として舞台上にいる時間もあります。劇中劇でシェイクスピア戯曲の名場面を次々に繰り出し、死にかんするセリフがいくつも繰り返されます。題名の『ウィル』はシェイクスピアだけでなく、遺書(Will)の意味でもありました。

 最後は、劇場の壁の棚に入れられた多数の本が、2人の上にどっさり落ちてくる演出で終幕。人間の人生は書物になって未来へと受け継がれていくのだなと思いました。体や声は残りません。生きている人間(=俳優)の命は儚いですね。

出演=田代隆秀、髙山春夫 声の出演:野村玲子(友情出演)
脚本・演出=河合祥一郎
照明=富山貴之
音響=星野大輔(サウンドウィーズ)
舞台監督=小田史一(NON GATE THEATRE)
演出部=今井聡 八木澤賢
宣伝美術=高橋常政
宣伝デザイン=恒松建次
制作=加藤恵梨花
芸術総監督=平田オリザ
技術協力=鈴木健介(アゴラ企画)
制作協力=木元太郎(アゴラ企画)
企画制作=Kawai Project/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
【発売日】2018/05/01
一般前売り=3500円
当日=4000円
U-25=2500円
高校生以下=1000円
*U-25・高校生以下のチケットはカンフェティでのみの取り扱い、当日要証明となります。あらかじめご了承ください。
http://www.komaba-agora.com/play/6151
http://stage.corich.jp/stage/91961

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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