彩の国さいたま芸術劇場・さいたまネクスト・シアター0(ゼロ)『ジハード ―Djihad―』06/23-07/01彩の国さいたま芸術劇場・NINAGAWA STUDIO(大稽古場)

 国際演劇協会日本センター「紛争地域から生まれた演劇シリーズ」で朗読上演されたベルギー戯曲が、さいたまネクスト・シアターの4人の俳優の出演で本格上演へ。演出家は朗読時と同じ瀬戸山美咲さん。

 この公演のために来日した劇作家イスマエル・サイディさんのトーク付きで贅沢でした。上演時間は約1時間50分。

 すでに42万人が観ているという大ヒット戯曲です。しかもその半数が中高生とのこと。どうぞこのチャンスをお見逃しなく。

≪あらすじ≫ 公式サイトより
ベルギーのブリュッセルに住む移民2世の若者、ベン、レダ、イスマエル。3人は「ジハード(聖戦)」に参加するため、内戦の続くシリアに旅立とうとしている。ベルギー社会とイスラム教コミュニティのはざまで、自分の愛するものを禁じられ、行き場のない思いを抱える彼らは「ここではないどこか」を求めていた。彼らは戦場で何を見つけるのか、そして愛と情熱の行方とは────。
≪ここまで≫

 スマホを持っている若い兵士が志願してシリアに行き、戦場にはドローン爆撃機などの最新の兵器も登場します。

 ここからネタバレします。

 彼らが誰か(宗教上の兄弟)のために命を懸けて戦うと決心したのは、周囲から排斥されたためと言えます。

 「本当は漫画が描きたいけれど、イスラム教では禁じられているから習字をする」「愛する女性と結婚するため、彼女にイスラム教に改宗してもらう」など、本当にしたいことができないので、他のことでごまかす(もっとふさわしい表現があったのですが失念しました)のは、国籍、宗教の違いなどに関係なく、誰もが陥る状況だと思います。

 彼らは敵が誰なのか知らずに武器を取って戦っており、信仰についても親の言いつけにひたすら従っていただけで、実は「コーランを読んだことがない」という衝撃の事実。我が身を振り返れ、ですね。

 ベン(竪山隼太)の歌とエアギターにイスマエル(堀源起)とレダ(小久保寿人)がノリノリになる場面で大笑いしました。全体的に笑える場面をもっと増やしてもいいのではと思いました。

≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 ゲスト:イスマエル・サイディ(『ジハード』作者、劇作家、 映画監督、演出家、俳優)、瀬戸山美咲
 司会:林英樹

 サイディさんは俳優、演出家として2014年の初演時に350公演に出演。『ジハード』は今、日本、ドイツ、フランスで上演中。イタリア、オランダ、モロッコ、カナダ、レユニオン島でも上演。

 サイディ:(今回の日本公演でもわかるとおり)国境を超えることができるのが、文化だと思う。
 サイディ:私の両親はモロッコからベルギーに移民してきた。第二世代は生まれ育った国と違う文化状況の中で生きている。(この戯曲で描かれることは)第二世代が皆味わうこと。自分の作品のテーマは(戦争、宗教というわけではなく)常にアイデンティティー。
 サイディ:人間はそれぞれがラザニアのようなもの。多層の状態を混ぜることができず引き裂かれている。一人の人間をラザニアのように多層のまま受け入れるのが大事だと思う。

 サイディ:文化大臣が観に来てティーンネイジャーの教育のために上演して欲しいと依頼された。学校を巡回するのではなく、子供たちに劇場に来てもらうよう希望した。劇場は社会の上流クラスやエリート向けの場所ではない。10代の彼らも帰属する空間である。子供たちは2000席クラスの劇場に、バスで連れられてくる。上演後には生徒たちとのトークセッションを設けた。

世界最前線の演劇1 [ベルギー]
【出演】
イスマエル(漫画が得意、最後まで生き残りテロを起こそうとするが…):堀源起、ベン(元プレスリー・ファン、敬虔なイスラム教信者、リーダー格、ドローンによる爆撃で死亡):竪山隼太、ミシェル(シリアで妻を亡くしたキリスト教徒):鈴木彰紀、レダ(異教徒の恋人との結婚を母に禁じられた大卒男性、バカっぽい、おそらく狙撃され死亡):小久保寿人 声の出演:前原麻希
脚本:イスマエル・サイディ
翻訳:田ノ口誠悟
演出:瀬戸山美咲
美術:原田保 照明:岩品武顕 音響:金子伸也 演出助手:前原麻希 衣裳:紅林美帆 舞台監督:須田雅子 企画コーディネート:林英樹 制作:田中美樹 高木達也 久保田翔子 大道具:金井大道具(山田啓太) 銃器指導:坂上善樹 制作統括:渡辺弘 技術統括:岩品武顕 制作・営業担当グループリーダー:中田晃史 営業:鶴貝典久 松井哲 票券:本郷充子 鈴木優子
主催・企画・制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
企画協力:公益社団法人国際演劇協会 日本センター
後援:ベルギー大使館
【発売日】2018/03/24
<整理番号付自由席>
一般:3,000円
メンバーズ:2,700円
U-25:2,000円
※U-25:25歳以下対象/劇場のみ取扱/要身分証明書
*開場時間よりチケットに記載されている整理番号順のご入場となります。
*開場時間を過ぎますと整理番号は無効になります。
http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/4875
http://stage.corich.jp/stage/92266

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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