てがみ座『海越えの花たち』06/20-26紀伊國屋ホール

 長田育恵さんの新作を木野花さんが演出されます。初日の客席には演劇関係者が非常に多く、どぎまぎするほどでした。注目の公演なんですね。上演時間のアナウンスは約2時間15分、休憩なし。

 初日は受付に長蛇の列ができていました。これからご覧になる方でチケットを受け付け預かりにしている方は、早めに劇場へどうぞ。

≪あらすじ≫ 公式サイトより
昭和二〇年八月十五日
朝鮮半島は、その日を境に「異国」となり、
私たちは「外国人妻」となった。

敗戦時、朝鮮半島には百万を超える日本人が在住していた。
半島からの引揚げは、昭和二三年の夏までにほぼ完了したとされるが、
すでに日本に戸籍がなく、身元引受人もいない女たちに帰る場所はなかった。
女たちは「故郷の空」を歌い、「アリラン」を踊りながら見つけ出す。
まぎれもない自分自身を。
在韓日本人妻たちの収容施設「慶州ナザレ園」をモチーフに、
半島の土に「日本人」として還っていく人々の軌跡を描く物語。
≪ここまで≫

 歴史を描くお芝居を観ると、自分が知らないことの多さに落胆するとともに、教えていただけることへの感謝の気持ちが湧いてきます。過去に確かに生きていた名もなき人々の痛み、苦しみを、俳優が自分のものとして表現することで、観客は事実を知るだけでなく、自分の体験として心身に刻むことができる。これが“歴史の記憶装置”としての演劇の役割だと思います。心が潰されるような辛い出来事を、舞台上で経験する俳優の仕事は尊いですね。

 ここからネタバレします。

 場面転換は主に舞台上の装置や道具の移動によって行われます。場面と場面の間に移動の時間があり、物語が途切れてしまうのが残念。たとえば聞き取り調査の場面で女性たちが客席に向かって語っている最中に、裏や隅で道具等の移動をしてもよかったんじゃないか…などと素人考えをめぐらせました。

 開演前や直後は舞台上の非常口や機構などが露出して見えていたので、「これは“演劇(虚構)”である」と見せる異化効果を期待していたのですが、私には気づけなかったですね。そのような意図は最初からなかったのかもしれません。

 日髙啓介さん演じる日本領事館の男性が「日本」として「謝罪」する場面は、なぜか自分も報われたような気持ちになりました。天皇を演じる一庶民が劇中劇で謝罪・退位する井上ひさし作『夢の泪』と同じだと思いました。演劇のフィクションの効用として、この場面があることが私にとっては救いでした。

 1965年(たぶん)の日本でベトナム戦争反対を訴える学生運動が、プロローグとエピローグになっていました。

出演:石村みか、箱田暁史、岸野健太、実近順次、桑原裕子、内田慈、西山水木、日髙啓介、半海一晃、中西良太
脚本:長田育恵 演出:木野花
美術:乘峯雅寛 照明:稲葉直人(ASG) 音響:内藤勝博 衣裳:阿部美千代(MIHYプロデュース) 演出助手:大野裕明(花組芝居) 舞台監督:杣谷昌洋 宣伝写真:田中亜紀 宣伝美術:鈴木勝(FORM) 佃美月(FORM) 制作:有本佳子(プリエール)和田幸子(プリエール) 票券:飯塚なな子((劇)ヤリナゲ) 主催:てがみ座
【発売日】2018/05/14
<全席指定>
前売:4,500円
当日:4,700円
25歳以下:3,500円(前売・当日同一料金)
※U25はプリエールのみ取扱い/入場時身分証提示
【前半割引】6月20日(水)&21日(木)の回は、前売・当日・U25それぞれ通常料金より500円引きとなります。
※未就学児入場不可
http://www.tegamiza.net/take19/
http://stage.corich.jp/stage/91741

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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