【戯曲公募】(公財)東松山文化まちづくり公社「東松山戯曲賞(審査員:岩松了、岩崎正裕、桑原裕子、瀬戸山美咲、渡辺弘)」08/31〆切(郵送または持参)

 埼玉県東松山市が「~平成家族物語~舞台芸術によるまちづくりプロジェクト第1弾」と銘打ち、「東松山戯曲賞」を創設されました。募集要項等は公式サイトでご確認ください。

 受賞作は3年かけて朗読劇、演劇、音楽劇として上演予定(演出:瀬戸山美咲)。「平成」という年号を与えられた30年間は、2019年(平成31年)4月30日で終わります。テーマは「大都市周辺の街」「家族」「希望」の3つです。

●東松山文化まちづくり公社「東松山戯曲賞
 応募内容:「大都市周辺の街」「家族」「希望」の3つをテーマとした日本語による未発表、未上演の戯曲
 原稿枚数:150枚以内(400字詰め原稿用紙)
 〆切:8月31日 当日消印有効(郵送または持参)
 賞金:優秀作(1篇)賞金50万円
 審査員:岩松了、岩崎正裕、桑原裕子、瀬戸山美咲、渡辺弘

 以下は主催者よりいただいた「東松山戯曲賞」公募発表会の情報(抜粋)です。企画意図や戯曲のテーマに込められた思い、そして東京のベッドタウンである東松山市の現状についても、詳しく述べられています。

●~平成家族物語~
 舞台芸術によるまちづくりプロジェクト第1弾
 『東松山戯曲賞』公募発表会(平成30年4月26日)

 発言者(敬称略):
 公益財団法人東松山文化まちづくり公社 理事長 石田義明
 埼玉県芸術文化振興財団業務執行理事兼事業部長 渡辺弘
 劇作家・演出家 瀬戸山美咲

■公益財団法人東松山文化まちづくり公社 理事長 石田義明
(主催)

東松山市は東京のベットタウン。東京都心への通勤者は約2.5万人。埼玉県からは約100万人。ベッドタウンと言っても、まだ自然は十分に残っている。募集要項の写真は、市内ニュータウン上空から撮影した。里山、田園が十分残っている。

他の大都市周辺の街と同様、今後急速な高齢化が進むことが予測されている。東松山から都心の池袋まで朝ラッシュ時は1時間、さらに乗り換えて都心3区に通うと、2時間近く、往復4時間を毎日費やしてきた。これまでは、生活面でのあらゆる機能、教育・文化芸術・医療・娯楽・飲食等を都心で済ませてきた。この地に移り住んできた人々が大量に退職し、それらの機能を居住地近くで求め始めている。これが医師不足などの大きな問題となっている。

この街で育った多くの第二世代は、東京近くに移り住み、戻ってこない。東京をはじめとする大都市周辺の都市での課題は、ここにある。かつてのニュータウンは今オールドタウン。限界集落となっている。高坂ニュータウンは昭和59年から分譲が開始され、6,000人弱が居住。隣接する鳩山町には鳩山ニュータウンが昭和49年から分譲開始。多いときは一万人近くが居住。将来半減が予想されている。

平成31年4月30日で平成は終わる。「平成家族物語」は、この時代をこれらの地域で生活した市民の生きざまを描くもの。それは、生活のその拠り所としての家族の姿をあぶり出すものとなる。この戯曲賞を公募するにあたり、以上のような考えから、三題噺方式で、「大都市周辺の街」「家族」「希望」の3つをテーマとした。

今までの説明で「希望」という言葉は触れていないが、どうしても必要な言葉だと考えている。私ども公的機関としては入れることが必要である。

優秀作の戯曲を3年かけて朗読劇、演劇、音楽劇として上演予定。多くの皆さんが、この物語の戯曲を読み、舞台を観、この30年を振り返り、来るべき新しい世紀に立ち向かう気構え、心構えを持ってほしいと願っている。

■埼玉県芸術文化振興財団業務執行理事兼事業部長 渡辺弘
(事業コーディネーター兼選定委員)

戯曲賞を開催し、選び、上演するだけでも1年や2年がかかる大変な事業なのに、このホップステップジャンプの3段とびに驚いた。一つの戯曲が、まずは朗読劇という形で助走し、次に演劇作品にする。それをさらに音楽劇するという事で、市民と共に上演したいという、石田理事長はじめ、スタッフの方々の熱意に動かされた。

戯曲賞というのは、劇作家協会や近松賞などありますが、劇作というのは上演されてはじめて成立する。上演という事も含めて、選定委員も、具体的にできる方を選ぼうとまず思いました。劇作家だけやっている方もいるが、劇作もするが実際に演出もする、両方携わっている方がいいかと思いました。

ちょうどこのお話を頂いた頃に、岩松さんとゴールドシアターの新作を終えたところでした。岩松さんも様々な戯曲賞に関わっており、また、兵庫県が主宰し、多くの市民がかかわる、ピッコロ劇団の芸術監督もされているとのことで、岩松さんにまず相談をして引き受けていただきました。岩崎さんは関西の方で先日、上田市で市民劇をつくられました。

私としては、どうしても女性に入っていただきたく、瀬戸山さんと桑原さんという今一番輝いているお二人にご相談した。特に瀬戸山さんは多摩でも市民劇をされています。世田谷でも、そういった活動をやってらっしゃる。また、劇作家としても輝いているミナモザという劇団で素晴らしい作品をお創りになっていらっしゃる。今年、6月には、私どもの劇場で海外の戯曲を演出していただきます。

問題はこれから秋に、3か年ステップアップしていく、この事業の作品を選ばなくてはいけないというです。2019年3月には、瀬戸山さん朗読劇の演出を行なっていただく。さらに、2年目の演劇の演出、そして最後の音楽劇は正直全くどんなタイプになるかわかりません。

ただ、一つの戯曲が変わっていくさまは本当に面白いし、そこに参加する市民の方たちのなかで演劇に関係のない、音楽の方が関わったり、美術の方が加わったり、市民劇としての大きな広がりを感じます。これは、新しい動きができるのではないかと思います。私自身もそれに向かってとにかく全面的にサポートしていくつもりです。

■劇作家・演出家 瀬戸山美咲
(選定委員また、3か年の朗読劇、演劇、音楽劇の演出)

最初この戯曲賞のお話を伺ったとき音楽劇の構想まであると伺って本当にびっくりしました。でも、東松山のみなさんの熱い想いに触れ、未知のことだからこそぜひチャレンジしてみたいと、審査員と演出を引き受けました。

戯曲賞は作家にとって活動を始めるための入り口となりますが、思ったより多くはありません。このようなかたちで新しい戯曲賞ができることがまずとても嬉しいです。私自身も20代のころに地方自治体のやっている戯曲賞に応募して、その時は実力的に追いつかなくて漏れてしまったのですが、審査をされた方から「いいところがありました」とお手紙をいただいて、それが長い間励みになっていました。

今回、平成家族物語と銘打っていますが、私自身、平成という時代を振り返ったことはまだありません。しかし、すでに30年分語ることがあり、また、「大都市周辺の街」「家族」「希望」という3つのテーマは、じっくり考えるとすごく取り組み甲斐のあるテーマだと思っています。昭和の終わりから、都市はどんどん広がっていき、ベッドタウンができました。この30年間の大都市周辺のひとつの町を描くことは、この30年間の日本全体のことを書くことにもつながると思います。

「家族」というものも、この30年ですごく形が変わってきました。特に女性をめぐる状況は、ここ一か月くらいの間で地殻変動が起きていると感じます。女性の状況が変わったら男性の状況も変わっていくと思っていて、男性の生き方もこれから色々幅が広がっていくと思います。応募する劇作家のみなさんは、自分の家族のことでもいいですし、足を運んで取材してみたり調べたりして、一軒一軒の家の中で何が起きているのか想像して、この作品を書いていただけたら嬉しいです。

「希望」ということは考えれば考えるほどわからなくなる部分です。成長というのもが希望だった時代ではもうありません。人とのつながりだったり、他者を認めることであったり、一人ひとりが生きている実感をもって生きていくことだったり、新しい希望のかたちというものを、ぜひこの戯曲の中に書いていただけたらと思います。

そして、今回上演にあたって市民の方と一緒に作品をつくるというのをとても楽しいと思っています。地域で演劇をやっていて一番面白いのはみなさんの目的がバラバラだということです。演劇自体に興味があったり、地域のことに興味があったり、ただ人と出会いたかったり。目的がいろんな人が劇場で出会って一つの作品を作っていく過程には、新しい発見がたくさんあります。

戯曲賞で上演の演出をするということで、現時点でどんな作品になるかお話できない、想像できないスリリングさもあります。一人でも多くの方に応募していただき、よりクオリティの高い良い作品を選べたらと思います。最終的に音楽劇にしていくときは、最初に書いた戯曲のままやるのが難しい部分も出てくると思います。作者の方との共同作業を重ねながら、3年間の時間をかけて戯曲を育てていくつもりで一緒に取り組んでいきたいと思っています。

締め切りまで4か月、長いようで短いです。お題が決まっているというのは実はとても書きやすい部分もあったりすると思うので、ぜひ色々な方に応募していただけたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

POINT① 人口10 万人未満の自治体で、戯曲公募の事例はない!!
現在、市町村での同様な事業は、尼崎市の近松賞がある。尼崎市の人口は46万人と、東松山市の5倍である。また、仙台市の「せんだい短編戯曲賞」、愛知県文化振興事業団の「AAF戯曲賞」、北海道文化財団の「北海道戯曲賞」あるが、いずれも政令市、または道県が主体の財団である。10万人未満の自治体がこのような取り組みを行なっている事例はない。

POINT② 1つの作品を、朗読劇→演劇→音楽劇へと変化させるのは、全国初の試み!!
小説から朗読劇や演劇、最近はやりのアニメや漫画から派生した2.5次元ミュージカルなど、2段階を踏む作品は多数存在する。選定委員に選ばれた1つの作品を、初年度に朗読劇、2年目は演劇、3年目に音楽劇へと3段階で変化する事業は、全国でも類を見ない試みである。
この最難関ともいえる事業を、子どもから大人まで、そして市民が参加する音楽団体や美術団体、市内高校演劇部など、様々なジャンルの方々と協力し、市民とそれを支えるプロの皆さんと共に、3ヶ年でチャレンジしていく。

POINT③ 彩の国さいたま芸術劇場の全面的支援!!
舞台制作において、公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団 彩の国さいたま芸術劇場が、公益財団法人東松山文化まちづくり公社を全面的に支援。
埼玉県内では、吉川市において昨年度市民劇制作にあたり、彩の国さいたま芸術劇場が協力を行った。今回、故蜷川幸雄芸術監督が進めた演劇事業のノウハウを一番良く知る渡辺弘氏が、コーディネーターとして参加いただく事で、本事業の安定性を得る事が出来る。

平成30年4月26日
公益財団法人東松山文化まちづくり公社
舞台芸術によるまちづくりプロジェクト第1弾『東松山戯曲賞』公募発表会 
http://www.pac.or.jp/hfs.html

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