CHAiroiPLIN+三鷹市芸術文化センターpresents『踊る小説4「ERROR」』04/21-30三鷹市芸術文化センター星のホール

 スズキ拓朗さん率いるCHAiroiPLIN(チャイロイプリン)が太宰治の小説「人間失格」と「失敗園」を舞台化。上演時間は約1時間40分。

 CHAiroiPLINが三鷹市芸術文化センター星のホールで新作を上演するのは、2015年11月の『踊る戯曲3「三文オペラ」』以来です。今回も視覚化のアイデアや演劇的見立て、身体表現とダジャレ、そして尖がった批評性とエンターティナー精神に感服しました。オリジナル楽曲と歌、ダンスで綴るオリジナルの太宰ワールドは、コミカルで牧歌的でありながら、淫靡で狂騒的な空気もあって濃密!素晴らしかった~♪

 原作は青空文庫で読めます(⇒「人間失格」⇒「失敗園」)。

≪作品概要≫ 公式サイトより
いつでも人は前に向かって「失敗」する。

2018年、春! 三鷹の森に、言の葉が舞い踊り出す!

過去に、『踊る小説』シリーズと銘打ち、芥川龍之介、江戸川乱歩、金裕貞など、
国内外の小説をダンスにしてきたチャイロイプリンが
太宰治「人間失格」×「失敗園」に挑戦!

戯(おど)けにお道化る「人間失格」! 咲くに咲けない「失敗園」!
2つの名作をモチーフに、次世代コンテンポラリーダンス界若手筆頭の、
チャイロイプリンが踊(おど)けます! 乞う、ご期待!
≪ここまで≫

 舞台をほぼ三方から客席が囲み、床の高さは客席と地続きになっています。星のホールは作品ごとに空間を変えてくれていつも新鮮。舞台は「庭」という設定です。植物が育つ場所なんですね。出演者は「人間失格」の登場人物と「失敗園」の植物を演じます。

 ここからネタバレします。

 ほぼ何もないと言っていい空間に、長い金属の棒が1本。棒の真ん中につけられた紐が天井につながっています。幕が開くと、棒が上へと引っ張られて宙に浮きました。物語が進むに連れて、色んなものが棒の両端に吊り下げられていきます。なんと、モビールでした! 「人間失格」の主人公・葉蔵は不器用で、バランスを取ることができなかったんですね。いやー…アイデアにも、工夫を凝らした重し(小道具など)にも感動しました。

 矢継ぎ早に繰り出されるダジャレと見立ては、繰り返されるので意味が分かりやすいし、鮮烈な印象を与えます。たとえばトマト役のジョディさんが棒を持って「バー、バー」と言うと、「ババア(おばさん)」「BAR(お酒を飲むお店)」「Bar(棒)」の3つの意味が伝わります。
 葉蔵は3人(スズキ拓朗、香取直登、清水ゆり)で演じます。挫折と裏切りのため葉蔵がすっかり絶望してしまう終盤では、「SAKE」の音が「酒なくていいのに」「避けなくていいのに」「咲けない…」とつながりました。

 一番初めの葉蔵を演じる清水ゆりさんは、下手奥でアコーディオン、ピアノ、電子オルガンを演奏しながら歌を歌い、ほぼずっと舞台上にいるので語り部のような存在です。楽曲は優しくおどけてもいるけれど、悲しげでシニカルでもあるので、残酷なおとぎ話のような味わいがあります。

 葉蔵(葉ちゃん)は咲けずに枯れてしまいましたが、最後に声に出された音は「タネ(種)」でした。カーテンコールでは清水さんの生演奏・生歌に合わせて出演者が一人ずつ紹介され、天井からは紙でできたカラフルな種が舞い落ち続けました。

 ※初日はモビールの紐がはずれるトラブルがありましたが、ダブルコールでした。

太宰治作品をモチーフにした演劇公演 第14回
【出演】
葉蔵(調子乗り):スズキ拓朗
葉蔵(女にモテる):香取直登
葉蔵(純粋):清水ゆり
ねぎ(ツネ子:心中相手):福島梓
だいこん(シズ子:家庭的な女):荒木亜矢子
にんじん(シゲ子:シズ子の娘):岩坪成美
ネム(ヨシ子:タバコ屋の女、編集者と浮気):エリザベス・マリー
ばら(薬屋の女、葉蔵に薬を渡す):田中美甫
トマト(バーのマダム):ジョディ
とうもろこし(ヒラメ):ぎたろー
わた(竹一・葉蔵のおどけを見破り「わざわざ」と言った同級生):埜本幸良
へちま(編集者、葉蔵の漫画と春画の担当):鳥越勇作
矢車草(P、葉蔵にたかる):田中博士
クルミ(堀木、葉蔵にたかる。クイズの司会):ジントク
ひまわり(葉蔵の高圧的な父):柏木俊彦
生演奏・歌:清水ゆり
※本山三火は体調不良のため降板。
原作:太宰治「人間失格」「失敗園」より
振付・構成・演出:スズキ拓朗
音響:許斐祐 照明:長尾祐介 音響:許斐祐 照明:長尾祐介 衣裳:竹内陽子 舞台監督:筒井昭善 宣伝美術:柳沼博雅 写真撮影:福井理文 映像撮影:たきしまひろよし 当日パンフレット:橋本ロマンス 制作:CHAiroiPLIN 制作協力:ROCKSTAR有限会社 主催(公財)三鷹市芸術スポーツと文化財団
【発売日】2018/02/08
【全席自由】
(日時指定・整理番号付)
【会員】前売2,600円・当日2,900円【一般】前売3,000円・当日3,300円
【学生】2,000円(前売・当日とも) 【高校生以下】1,000円(前売・当日とも)
★早期観劇割引・☆平日昼公演割引 の回は、各300円引き
http://mitaka-sportsandculture.or.jp/geibun/star/event/20180421/
http://stage.corich.jp/stage/90474

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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