東宝/ワタナベエンターテインメント『ミュージカル「ブロードウェイと銃弾」』02/07-28日生劇場

 ウディ・アレンが監督した1994年の映画「ブロードウェイと銃弾」を、アレン自身が2014年にミュージカル化した舞台の日本初上演です。パンフレット(1800円)によると、米国以外で上演されるのも初めてなんですね。演出は福田雄一さんです。上演時間は約2時間45分、休憩25分込み。

 「何も考えず楽しんで!」と両手を広げて迎えてくれる作品でした。明るくて豪華で、ストレートに馬鹿で(笑)、アンサンブルのダンスがいい!

ブロードウェイと銃弾 ―デジタル・レストア・バージョン― [Blu-ray]
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≪あらすじ≫ 公式サイトより
舞台は1920年代、禁酒法時代のニューヨーク。
劇作家のデビッドは、かねてからの念願が叶い自分の戯曲をブロードウェイの舞台にかけることになり張り切っている。しかし、プロデューサーが見つけてきた出資者はマフィアの親玉ニック。しかもキンキン声でろくに台詞も言えない、大根以下の自分の愛人オリーブを「主演に据えろ!」と要求し、部下のチーチを監視役として送り込んできた。さらにプライドの高い主演女優ヘレンは脚本を書き換えろと色仕掛けで要求し、名優だが過食症で女癖の悪いワーナーはオリーブと怪しい関係を持っている。ひとクセもふたクセもある出資者や俳優たちが次々と無理な注文を繰り出してくるハチャメチャな状況に、芸術至上主義でマジメなデビッドは困惑を極める。
そこになぜか、てんやわんやの稽古模様をずっと観察してきたチーチまでが脚本と演出に口を挟んでくる。舞台を完成させたい一心のデビッドは、数々の妥協を余儀なくされその度に頭を抱えてしまうが、チーチの提案は、芸術に縁遠いと思われたが的確な意見ばかりであることに気づく。デビッドと実は舞台を愛するチーチは、共に苦心して脚本を書き直し、舞台は見事大成功をおさめたが、それが引き金となり思わぬ大騒動が彼らに巻き起こっていく…。

舞台と人生、どちらが大切か―大きな選択を迫られた彼らが選ぶものとは!?
≪ここまで≫

 福田さんの舞台といえばギャグ、テレビネタ、出演者いじり等でワハハと笑わせてくれる…というのがすぐに思い浮かぶ特徴ですが、出演者が皆、とても楽しそうなことも共通点だと思います。

 パンフレットにあるように演出(福田雄一)の基本姿勢は「宴会を楽しんでもらうこと」で、私は存分に楽しませていただきました。とはいえ楽しいだけではなく、終盤では死の香りやそれに見合う緊張感もあって、ウディー・アレン映画らしい後味があったのも好印象でした(原作映画未見ですが)。

 アンサンブルの振付が華やかで迫力があり、キビキビした動きも徹底されていて見ごたえがありました。特に一幕終わりごろのタップダンス(群舞)が良かったです。あと、電車の場面も!!

 ここからネタバレします。

 デビッド(浦井健治)の劇作に協力し、座組みの一員と化していたチーチ(城田優)は、自分が付き添っているオリーブ(平野綾)の演技が下手過ぎることが許せなくて、彼女を殺してしまいます。それがニック(ブラザートム)と手下どもにバレるかバレないか…とハラハラする時間がしっかり作られていました。
 
 チーチがオリーブを運河に葬り、チーチ自身もギャングに殺されたけれど、舞台は大成功。ブロードウェイ初日閉幕後のパーティーで、出資者のニック曰く「儲かっちゃいました~」。デビッドが「脚本はチーチが書いたのだ」と告白し、主演女優ヘレン(前田美波里)とは破局。するとデビッドの妻エレン(愛加あゆ)が「デビッドの友達との浮気は嘘だ」と言い、夫婦の寄りが戻って大団円でした。殺人も裏切りも、なかったことのようにサラっと打ち消されて、見せかけの幸福を謳歌する…というのがウディ・アレンぽいですよね。残念ながらそれが現実だという気もします。

 平野綾さんはパンフ通り「すばらしり」で(笑)、オツムの弱さのだだ漏れっぷりが痛快です。あけっぴろげの下ネタも堂々たるもので、健康的なエロスも魅力でした。チーチから「アニメ声!」というツッコミもあり。
 前田美波里さんは“ザ・女優”でさすがの存在感。ありがたくて拝みたい気持ち。

≪東京、大阪、福岡≫
出演:浦井健治、城田優、平野綾、保坂知寿、愛加あゆ、ブラザートム、鈴木壮麻、前田美波里、加治将樹、青山航士、朝隈濯朗 奥山寛 坂元宏旬 佐々木崇 高橋卓士 高原紳輔 田村允宏 福永悠二 堀江慎也 横山達夫 岩﨑亜希子 遠藤瑠美子 可知寛子 樺島麻美 伯鞘麗名 福田えり 山田裕美子 横関咲栄
脚本:ウディ・アレン オリジナル振付:スーザン・ストローマン
原作:ウディ・アレン/ダグラス・マクグラス(映画「ブロードウェイと銃弾」より)
演出:福田雄一
翻訳・訳詞:土器屋利行
振付補:ジェームス・グレイ
音楽監督:八幡茂
音楽監督補・指揮:上垣聡
音楽監督助手:宇賀神典子
歌唱指導:山川高風 / やまぐちあきこ
美術:松井るみ
照明:高見和義
音響:本間俊哉
衣裳:生澤美子
ヘアメイク:富岡克之(スタジオAD)
舞台監督:廣田進
演出助手:上田一豪
オーケストラ:東宝ミュージック ダット・ミュージック
稽古ピアノ:宇賀村直佳 / 栗山梢 / 石川花蓮
タップ指導:小寺利光
制作:細川ゆう子
プロデューサー:岡本義次(東宝) 樋口優香(東宝) 渡辺ミキ(ワタナベエンターテインメント) 渡部隆(ワタナベエンターテインメント)
製作:東宝/ワタナベエンターテインメント
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
【発売日】2017/11/25
S席 13,000円
A席 8,000円
B席 4,000円
http://www.tohostage.com/bullets/
http://stage.corich.jp/stage/88494

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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