東京芸術劇場「リロ・バウアーによる俳優・ダンサーのためのワークショップ2017・ショーケース&意見交換会」12/22東京芸術劇場B2F・リハーサルルームL

 東京芸術劇場による人材育成を目的とした3週間に及ぶワークショップのショーケース(発表)を拝見しました(⇒告知エントリー)。講師は俳優、演出家のリロ・バウアーさん。

 昨年は計5日間ずつ、2チームに分かれての開催でした。前回に続いて今回も参加している方もいらっしゃいました。他のワークショップで見かけた俳優さんも多く、ワークショップを積極的に利用する俳優さんが増えている気がします。嬉しいです。

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 ブラックユーモアにあふれるロシアの小説を、いくつかのシーンにして披露してくださいました。モスクワで暮らす人々の窮状を描く短編(「家賃が高いためお風呂を借りて生活する家族」「腸チフスで病院に行くが診療してもらえず死体扱いされ、他の病気をもらって病院から出て行く患者」)などを、数バージョン拝見し、大いに笑わせていただきました。

 コントや説明的なものではなく、人間同士や物体、動物との関係性を演劇的に立ち上げていました。たとえば「動物園に爆弾が落ち、猿が生き延びる」というエピソードだと、動物園を表現する時にいろんな動物を演じてみるグループもあれば、客席側を檻に見立てて、動物園に来た客たちを演じるグループもありました。爆弾の表現が多彩でしたね~。爆弾発射場面を作ったり、無言でストップモーションをしたり、爆風に吹っ飛ばされて死体になる演技をしたり。椅子やランプ、バスタブといった物体を身体で表す工夫も面白かったです。

 参加者一人ひとりがとても創造的でした。俳優って本当に、同時にいくつものことをこなす(マルチタスクな)職業ですよね。こういう訓練と創作と交流の場が設けられることは、参加者の方々にメリットがあるだけでなく、私たち観客も“豊かな演劇体験”という贈り物をいただけます。心から感謝したいと思います。

 誰かが主役だとか、特定のグループがメインだとか、そういった印象は全くありませんでした。全員が全員に、そして観客と空間全体に、静かに気を配りながら存在していました。すごく風通しが良いんですよね。このワークショップ全体が、非常に民主的なプロセスだったのだろうと思いました。演劇の稽古場の、ある理想形なのかもしれません。

 東京芸術劇場・芸術監督の野田秀樹さんもご覧になり、感想を述べられました。ショーケース終了後、観客は解散しましたが、参加者とリロさん、野田さんをまじえた意見交換会が開かれたようです。
 野田さんは「今の東京に生きる人は本当の貧困や飢餓などを知らないけれど、(モスクワの生活を描く短編からは)匂いが感じ取れた」といった評価をされていました。

 参加者のご感想は「3週間という長期間が良かった」「期間中、何度も感銘を受けた」「学んだことを他の俳優と共有して早速使っている」など。
 運営の方にうかがったところ、リロさんは参加者一人ひとりに気を配り、良いところを発見して評価していかれたそうです。遅れ気味になった人がいたら支えて、決して仲間外れを作らず、全員で挑戦を続ける環境なのでしょうね。誰のことも絶対に置いてきぼりにしない、見捨てないというやり方は、私自身の日常にも生かしたいと感じます。

 ■参加者のツイート

 ■観客のツイート

 ■1998年のリロさん

講師:リロ・バウアー Lilo Baur
通訳:山田カイル
料金:40,000円
参加者:25名
日時:2017年12月22日(金) 
受付:14:50
ショーケース:15時開始予定
意見交換会:16時頃から1時間程度
会場:東京芸術劇場 B2F リハーサルルームL
http://www.geigeki.jp/performance/event179/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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