劇団絵生(えき)『友情~秋桜(コスモス)のバラード~』09/25-10/03ブディストホール

 ずいぶん昔から知ってはいたけれど観てはいなかったお芝居を初見。白血病と診断された14歳の女子中学生のお話です。アメリカであった実話がもとになっています。上演時間はカーテンコールの挨拶も含み約3時間弱(途中休憩15分を含む)。

 中国公演を経た東京公演は<Team 秋><Team 桜>の2バージョン上演で、私が拝見したのは<Team 秋>です。生徒役は全公演同じですが、先生役や父母役などはバージョンによって異なり、日替わりだったりも。

 もとは三船美佳さん主演の映画「友情 ~Friendship~」で、1999年に舞台化。ミュージカル版もあり、今年でもう18年になるんですね。上演回数は560回を超えています。

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 ≪作品紹介・あらすじ≫ 公式サイトより抜粋。
「友情~秋桜のバラード~」
上演回数560回! 17年目を迎えるロングラン
舞台「友情~秋桜のバラード~」は平成11年11月11日にスタートしました。
東京・シアターVアカサカを皮切りに、これまでに名古屋・中日劇場、米国・ロサンゼルス日米会館、大阪・松竹座、韓国・ソウルCOEX AUDITORIUM、中国・大連公演など国内だけでなく海外にも進出し公演させていただきました。
これまでに国内外の公演の上演回数が576回を数えることが出来ました。
<2016年8月30日現在>(※ミュージカル公演25回を除く)

この「友情~秋桜のバラード~」公演は、白血病の副作用で髪の毛が抜け落ちた生徒を励まそうと、クラスメイト全員で頭を丸め、温かく迎えられたという米国の実話に基づく感動の作品です。
 ≪ここまで≫

 主人公の島崎あゆみ役の保可南さん目当てで観に行き、彼女の演技に満足しました。元気いっぱいで笑顔が晴れやか。行動の動機に常に説得力があります。子供の病人らしいわがままも切なさを誘いました。“悲劇の主人公”で、しかも10代ですから、常に明るく前向きに振る舞う方が悲劇性が増します。

 ここからネタバレします。

 白血病だけでなく、在日韓国人差別、家庭内暴力、性的虐待、リストカット、万引きなど、思春期の子供たちが直面している深刻な問題も描かれていました。「高校進学をあきらめました」というあゆみのセリフがあったのですが、今は高卒認定や、通学しなくてもいい学校がありますので、脚本をアップデートしてもいいのではないでしょうか。AKB48の歌を歌ったりもしていることですし。

 夏休みの合宿(クラス全員旅行)で生徒全員が坊主頭になり、それぞれに悩みを吐露しはじめます。性別や外見の違いがなくなり、人間対人間として向き合う場が生まれたから、本音を明かせたんでしょうね。演劇ワークショップはこういう場を意図的に生み出すことができます。私はそれを体験しているからか、意外と言っていいであろう展開をすんなり受け入れられました。旅という非日常の時間が起こす奇跡もありますよね。
 在日韓国人であることを公表していない信一と、あゆみとの可愛らしいラブシーンは重要だなぁと思いました。死を目前に人間は何を欲するか。その選択の1つとしての恋愛、性愛は欠かせないと思います。

 カーテンコールで、岡野医師役として友情出演された慶応大学名誉教授の清水透さんがスピーチをされました。清水さんはお嬢様を白血病で亡くされています。清水さんのお話で、これが日本の実話ではないと知り、腑に落ちました。日本人の中学生がクラスごと自主的に坊主頭にすることは、難しそうだなぁと思っていたので。「出る杭は打たれる」社会ですし…。

 パンフレット1000円のうち500円が日本骨髄バンクに寄付されます。『友情~秋桜のバラード~』からの寄付額合計はなんと5000万円にのぼるそうですが、清水さんがおっしゃるには、日本骨髄バンクの今年の赤字が5000万円とのこと…。バブルの頃のようにはいかず、大企業からの寄付は無いに等しいそうです。微力ながら、パンフレットを購入させていただきました。

 清水さんは「若い方、特に中高生にご覧いただきたい」とおっしゃっていました。まずは場面転換ごとに必ずある“暗転&緞帳の上げ下ろし”を無くせば、前半のテンポが抜群に良くなると思います。上演時間も10分は短縮できるのではないでしょうか。ダンスの振付も刷新した方がいい気がします。勝手なことを言ってすみませんが、そうなれば個人的には勧めやすくなります。

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≪東京江東区、茨城、中国、東京築地、埼玉≫
<Team秋>と<Team桜>のダブルキャストでの上演(※生徒役は両組共出演)。
<Team秋>出演:渡辺裕之(担任教師)/藤田佳子(あゆみの母)/渡部充弘(あゆみの父)/小林可奈(英語教師)/小林ちえ(看護師)/高見こころ(女医)/松下京子(信一の母)/内田喜郎(信一の父)/ダンプ松本(民宿の経営者)※ダンプ松本は 9/25~9/28 のみの出演。
<生徒役>
保可南(島崎あゆみ)/大木宏祐(森山信一)/春可直子(鈴木幸子)/中村綾香/村島美紀/大久保静香/佐藤美優/小澤翔太/鶴岡政希/野村裕樹/三浦諒/由井柾
<岡野医師役>慶応大学名誉教授 清水透(9/25・9/26)
作・脚本:布勢博一
総合演出:田中林輔
演出:安部晴治
美術:有馬裕人
照明:宮崎勉
音楽:坂出雅海
振付:田中えり
アクション:滝洸一郎
所作指導:若柳禄寿
歌唱指導:大宮章寛
脚本協力:長谷川登三子
衣裳協力:松下京子
舞台監督:久保寺和人
舞台監督補:田所工作
絵出部:大地洋一
テーマソング「友情」 作詞・作曲:坂出雅海
著作・制作:劇団絵生
主催:「友情」上演実行委員会
かつら提供:アートネイチャー JO
全席自由 5,000円 (税込)
学生 2,500円 (税込)
※学生のチケットは劇団絵生のみ取扱い。当日証明書をご提示いただく場合があります
https://www.yu-jo.net/2017%E5%B9%B4-%E5%85%AC%E6%BC%94/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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