【稽古場レポート】新国立劇場演劇研修所『朗読劇「ひめゆり」』07/21新国立劇場地下リハーサル室D

 新国立劇場演劇研修所昨年発表した新作『朗読劇「ひめゆり」』に、今年は11期生が挑みます。「ひめゆり学徒隊」の3冊の手記をもとに戯曲化された、1945年の沖縄戦ドキュメンタリー・ドラマです。初日2週間前の稽古場に伺いました。

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●新国立劇場演劇研修所『朗読劇「ひめゆり」
 08/04-06新国立劇場小劇場 THE PIT
 出演:新国立劇場演劇研修所第11期生&岩澤侑生子(7期生)
 脚本:瀬戸口郁
 『私のひめゆり戦記』(宮良ルリ著) 
 『ひめゆりの塔 学徒隊長の手記』(西平英夫著) 
 『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』(仲宗根政善著)より
 構成:道場禎一 
 構成・演出:西川信廣(新国立劇場演劇研修所副所長)
 A席2,160円 B席1,620円 学生は半額。Z席の販売はなし。

 8月4日~6日の3日間、計4ステージで完売続出中。いま予約できるのは8月5日(土)14:00/19:00のみです。ご予約はお早目に!

≪作品紹介≫ 公式サイトより
演劇研修所では、ほぼ毎年夏に朗読劇「少年口伝隊一九四五」(井上ひさし作)を上演してきましたが、昨年演劇研修所として久しぶりの新作に挑戦し、朗読劇「ひめゆり」を制作しました。本作は、
太平洋戦争末期の沖縄戦における「ひめゆり学徒隊」をテーマにした沖縄戦ドキュメンタリー・ドラマです。今年も心新たに再演に臨み、現代と続く、当時への思いを紡いでいきます。
≪ここまで≫ 

語り部となる守下ルリ役の篠原初実さん
語り部となる守下ルリ役の篠原初実さん

≪あらすじ≫ 公式サイトより
「命(ヌチ)ドゥ宝(タカラ)」
   わたしたちは沖縄戦を忘れない

南国の太陽が輝く相思樹(ソウシジュ)並木の道。
那覇と首里の間、安里駅近くに

沖縄師範学校女子部
沖縄県立第一高等女学校

―通称「ひめゆり学園」と呼ばれる女学校があった。
女生徒たちは誇り高く、勉学に運動に活気に満ちた学園生活を送っていた。
しかし―昭和20年3月。太平洋戦争の大波は沖縄に押し寄せ、女生徒たちに従軍命令が下される。「ひめゆり学徒隊」として戦場に送り出された彼女たちは日本の勝利を信じ、野戦病院で献身的な看護活動に励むが、やがて沖縄は「鉄の暴風」吹き荒れる苛烈な戦場と化していき……
≪ここまで≫ 

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 稽古は朝10時から開始。早っ!さすが研修所ですね。演出の西川信廣さんをはじめ、音響、照明、舞台監督などの技術スタッフの方々も揃うなか、まずは通し稽古から。

 時は昭和19年(1944年)。物語の主軸を担うのは那覇の師範学校に入学した、石垣島出身の14歳の女生徒たち。石垣島から那覇は今の飛行機で約1時間の距離です。教師になる夢に燃える少女たちは、親元を離れて、厳しくも楽しい学校生活を送ります。

女生徒たち(川澄透子、高嶋柚衣、田渕詩乃、篠原初実)
女生徒たち(川澄透子さん、高嶋柚衣さん、田渕詩乃さん、篠原初実さん)

 7月になると、米軍の侵攻に備えて日本軍が沖縄本島に上陸。夏休みで帰省していた離島の生徒たちの家には、学校から「即時帰校せよ」「戻らないなら支給していた寮費、授業料などを返還せよ」といった内容の電報が届きます。「将来、指導者になる学生こそ、積極的に軍に協力しなければならない」という理屈です。

 軍国教育を受けてきた女生徒たちは、親の反対を押し切って那覇に戻ろうとします。目をキラキラさせて学業に励んでいた少女たちが、同じ純粋さで戦場へと突き進んでいく姿に、胸が引き裂かれる思いがしました。

西平英夫(教師、学徒隊長)を演じるバルテンシュタイン永岡玲央さん 
教師・西平英夫役を演じるバルテンシュタイン永岡玲央さん 

 男性教師たちは女生徒たちを懸命に守ろうとしますが、軍の命令には逆らえません。「生徒は非戦闘員であり、学生の本分は学業のはず」と主張しても、一蹴されてしまいます。

 那覇に戻った生徒たちは兵士とともに排水溝堀りに従事したり、看護の指導を受けたり、休みのない労働と訓練の日々に突入します。そして10月10日に、那覇の街を壊滅させた沖縄大空襲(十・十空襲)が…。

左は先輩女生徒役の金聖香さん、中央は教師・仲宗根政善役の上西佑樹さん
左は先輩女生徒役の金聖香さん、中央は教師・仲宗根政善役の上西佑樹さん

 「ひめゆり学徒隊」を日本史で学んでご存じの方は多いと思います。負傷兵に対する献身的な看護や、手りゅう弾による集団自決などは有名ですよね。この作品は当事者の手記を忠実に舞台化していますので、もっと詳しく知ることが出来ます。たとえば私は、先述の「即時帰校」命令や、壕の中での最初の敵が「空気」だったことを知りませんでした。

 爆弾投下後の爆音、火炎、煙はネット上の写真で見られますが、この舞台では、その煙の下で、炎の中で生きていた人々の姿を、事実に沿って、時系列に描いてくれます。しかも登場人物は実在した方々です。生身の人間である俳優が演じるため、体調、心境の変化や人間関係もつぶさに伝わります。

校長、児玉士官などを演じる山田健人さん
校長、児玉士官などを演じる山田健人さん

 一人の俳優が教師、兵士、上官といった立場の異なる役を演じるのが効果的です。女生徒たちを戦場に向かわせた人物が、泣き叫ぶ負傷兵を演じるのを観ると、人間はどちらの側にもなり得るのだとわかります。

左は先輩女生徒役の佐藤和さん、右は上西佑樹さん
左は先輩女生徒役の佐藤和さん、右は上西佑樹さん

 初演を拝見して内容は知っていたはずなのですが、女生徒や教員、ひどく傷ついた兵士たちの頭上で爆音が鳴り響く度に、大きなショックを受けました。私はこのショックが、今と将来の自分を守ってくれる気がします。私は本当に忘れっぽいので(汗)、全身で味わって知り直せる機会を逃さずにいたいのです。

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 通し稽古が終わった後、西川さんから全体についてのダメ出しがありました。演出助手は10期生の阿岐之将一さんです。
 西川:情感を入れすぎるところがあるので、冷静に。“朗読劇”だから、感情で走らずに、語りの意識を持つように。あと、どういう状態であっても、台本をしっかり手に持っていること。

左端が演出助手の阿岐之将一さん、その右が演出の西川信廣さん
左端が演出助手の阿岐之将一さん、その右が演出の西川信廣さん

 研修生から西川さんに対して、積極的に意見や質問が出ました。初めて音響、音楽ありで朗読をしたため、予想と違う音が鳴ったり、準備していたこと合っていなかったり、色んなことが起こったようです。「今すぐに音に合わせた演技をする必要はない。基本的にみんなの演技に、音も明かり(照明)も付いていくからね」と西川さん。音響さんはこれから毎日稽古場に付かれるので、着々と改良されていきそうです。

中央は音響の黒野尚さん
中央は音響の黒野尚さん

 西川さんが稽古場を出た後、阿岐之さんが細かなダメ出しを伝えていきました。阿岐之さんは1学年上の先輩で『ひめゆり』初演の出演者ですから、経験を踏まえた指摘は説得力抜群です。11期生にどこか余裕が感じられるのは、頼もしい演出助手がいるからかもしれません。
 先輩といえば方言指導の長本批呂士さん(3期生)も、初演から引き続き指導に当たられています。

 「明晰な日本語を発語する」という研修所の理念に則って、台詞一つひとつについての指摘もありました。聴こえづらい単語や、発音の直しなど、とても細かいです。

教師や看護士、女生徒の母親などを演じる岩澤侑生子さん(7期生)
教師や看護士、女生徒の母親などを演じる岩澤侑生子さん(7期生)

 『ひめゆり』では美しい合唱が数曲披露されます(歌唱指導:伊藤和美)。若い俳優たちが皆で心を合わせて歌うと、体にスーっと染み込んで、自分の心も洗われるようです。でも曲が「海行かば」(国民の戦意高揚を目的とした歌)なんです…。耳に、胸に届く思いが純粋で真っ直ぐなほど、辛く、苦しくなって、残酷さが際立ちます。
 ネタバレになるので詳細は書きませんが、そのまま受け取れて癒しになる歌もありますので、どうぞご安心を!

右は音楽教師・東風平恵壱役の生地遊人さん
右は音楽教師・東風平恵壱役の生地遊人さん
太田少尉、長田軍医、佐藤病院長などを演じる小比類巻諒介さん
「相思樹の歌」を作詞する太田少尉役の小比類巻諒介さん

 2期生から9期生まで(6期生を除く)が研修中に出演し、ほぼ毎年上演されていた井上ひさし作朗読劇「少年口伝隊一九四五」』は、今では国語の教科書に載っています。今作『朗読劇「ひめゆり」』もまた、新国立劇場演劇研修所によって生み出され、「歴史の記憶装置」としての演劇の役割を果たしていくのだと思います。

左は杉田少尉役の椎名一浩さん、右は佐藤和さん
左は杉田少尉役の椎名一浩さん、右は佐藤和さん

【チケット予約はこちら】

『朗読劇「ひめゆり」』公式サイト:
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_010317.html

チケットボックスオフィス電話:03-5352-9999
Webボックスオフィス:http://nntt.pia.jp/event.do?eventCd=1719567

【取り上げられた手記】

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■公式ツイッターでご紹介いただきました(2017/07/26)

≪出演≫新国立劇場演劇研修所第11期生&岩澤侑生子(7期生)
守下ルリ:篠原初実 
石垣伸子:田渕詩乃
野里美代:川澄透子
島袋キヨ:高嶋柚衣 
渡久山道子:佐藤和
新垣トシ:金聖香
大浜先輩、ルリの母、怖い看護婦など:岩澤侑生子(7期生)
仲宗根政善:上西佑樹
西平英夫:バルテンシュタイン永岡玲央 
東風平恵壱:生地遊人
岡田勝義、児玉士官:山田健人
太田少尉、長田軍医、佐藤病院長:小比類巻諒介
杉田少尉:椎名一浩

脚本:瀬戸口郁
 『私のひめゆり戦記』(宮良ルリ著) 
 『ひめゆりの塔 学徒隊長の手記』(西平英夫著) 
 『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』(仲宗根政善著) より
構成:道場禎一 
構成・演出:西川信廣(新国立劇場演劇研修所副所長) 
美術:小池れい 
照明:塚本悟 
音楽:上田亨 
音響:黒野尚 
衣裳:中村洋一 
ヘアメイク:前田節子 
歌唱指導:伊藤和美 
方言指導:長本批呂士(3期生) 下庫理ゆき 
演出助手:阿岐之将一(10期生)
舞台監督:米倉幸雄
演出部:後日記載予定
チラシデザイン:荒巻まりの(8期生)
演劇研修所所長:宮田慶子
主催・制作:新国立劇場
A席2,160円 B席1,620円 学生は半額。Z席の販売はございません。
就学前のお子様のご同伴・ご入場はご遠慮ください。お子様も1人1枚チケットをお求めください。
2017年8月4日(金)19:00 小劇場
2017年8月5日(土)14:00/19:00 小劇場
2017年8月6日(日)14:00 小劇場
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_010317.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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