兵庫県立ピッコロ劇団オフシアター『長い墓標の列』04/13-16ピッコロシアター中ホール

 新国立劇場で上演された『長い墓標の列』がとても良かったので、母を連れて兵庫県立ピッコロシアターまで観に行きました。上演時間は約2時間10分。

 チケット一般2000円、全席自由。これは安すぎるでしょう。土曜日の夜18時の回は終演後に著者の福田善之さん(劇作家、演出家、桐朋学園芸術短期大学・特別招聘教授、紫綬褒章受賞者)のトークがあり、さらに贅沢! 親孝行できました。

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≪あらすじ≫ 公式サイトより
時代は、第二次世界大戦の直前。
東大で実際に起きた“河合栄治郎事件”をモデルに
思想弾圧を受けながらも、自身の哲学を貫き通した先生のお話です。

昭和13年秋、世の中は軍部の台頭が目覚ましくなっていた。
国家主義・全体主義が優勢となる中で、大学の自治もその自由を失おうとしていた。
経済学部教授の山名(森 好文)はただ一人、自治を制限する案を支持する革新派と教授会で戦うが、自由であるべき思想の世界は否応なく嵐にさらされていく。
大学の自主規制、主義を転向していく者たち――山名は狂気にとりつかれたように研究を続ける。
≪ここまで≫

 四角いブラックボックスを斜めに区切り、片方が舞台、もう一方が客席(200席未満?)でした。

 序盤、中盤は演技に真実味が見つけられず、集中しづらかったですが、終盤になって見やすくなりました。

 ここからネタバレします。

 1939年の東京。経済学部教授の山名教授は大学自治を制限しようとする革新派と会議で戦います。最初は勝利するけれど、やがて自分たちだけでなく、革新派側も辞職に追いやられてしまいました。こまつ座『私はだれでしょう』の労働組合員・高梨のエピソードと被りました。占領軍が日本人のストライキを制限しなかったのは、組合の印象を悪くするためだったのではないか…と彼は考察します。体制側に乗せられ、煽られて行動してみたら、手のひらを返されたというパターン。

 山名教授の書斎には、昔の広辞苑のような分厚い本がどんどんと積み上がっていきます。書物は死者の言葉の塊とも言えます。増えていく本の束が題名にある「墓標」なのかなと思いました。

 山名教授は経済学だけでなく哲学等についても研究し、過去の偉人たちの言葉を必死で頭につめこんで、新しい理論を生み出そうとしますが、息子の靖は興味を示しません。それどころか今(第二次世界大戦中)の日本政府要人の人事を知らない(知ろうともしない)父を軽蔑していました。あぁ…今も、とてもよくあることだと思います。
 普通の生活をしながら、自分の周囲の変化をオンタイムで追いかけるだけでも大変です。でも、素直な気持ちで過去に目を向け、自分のこととして知識にしていくことも両立させないと、本当の意味で今を知ることは難しいとも思います。

 山名:人間の努力は無限大。
 山名:必然などない、犯人は必ずいる。

≪終演後のトーク≫ メモしたことの記録ですので正確性は保証できません。
 登壇者(下手から):森好文 福田善之 島守辰明

 福田:1957年に早稲田大学演劇研究会で初演。自分が27歳の時。次は(1958年に改訂版が)「ぶどうの会」で上演された。河合栄次郎事件(河合先生が粛学された実話⇒Wikipedia)がもとになっている。「自分が知ってることを書け」という先輩劇作家(たぶん井上ひさし?)の指導があり、自分の体験をもとに書いた。決して褒めることをしない木下順二先生が「○○が褒めてたよ」と噂をしてくださっていた。

 福田:戦後、亡くなった河合先生の著作はよく売れていた。河合先生の奥様が「子供たちには父の印税をあてにするような人間になって欲しくない」という思いで、大勢の書生を置いていた(その内の一人が自分だった)。私は昭和23年から河合先生の家に居候していた。

 福田:河合先生は昭和19年に亡くなったので面識はない。「山名教授の息子、靖のモデルは福田さんでしょう?」と言われることがあるが、そうではない。河合先生のお子さんは娘3人、息子2人。河合先生の家には本がびっしり。階段にも本が積まれていた。チャンバラがお好きで立ち回りをやったという劇中のエピソードは実話。城崎(きざき)のモデルは東大教授の大河内一男さん。大河内さんの父は大河内翠山。講談作家だったから、河合先生とは話が合っただろうし、きっと息子の一男さんもそうだったろうと予想するのだが。

 福田:前編、後編と2回に分けて発表した。読むだけで4時間半、上演は6時間かかった。
 島守:そんな大作を2時間10分にするという暴挙を許していただきました。ただ、山名教授と城崎の場面だけは、カットしない方がいいと言われて。
 福田:3幕だけは削れないだろうと思う。

 福田:私は今85歳。この戯曲は27歳の時に書いた。あまりに昔です。上演を観るのは正直、恥ずかしい。人間は恥ずかしいと思うことがないとダメだと思う。恥ずかしいことを乗り越えて、少しでも(お客さんに)わかっていただけることがあれば、それは(上演してくれた)皆さんのおかげです。

 福田:(芝居にあった)学生が手のひらを反すようなことは、実際に、あるんです。私は(劇作、演出の他に)教えることもしていて、生徒は自分の孫(またはひ孫)のような世代。「今は昔」の繰り返し。

≪裏話≫
 宮田慶子さんが演出した『長い墓標の列』(2013年3月)では、舞台の奥にスロープがあった。河合先生宅の裏に実際に坂があったらしい。

兵庫県立ピッコロ劇団オフシアターVol.33
出演(役名):森好文(山名庄策)  木全晶子(山名久子)  野秋裕香(山名弘子)  原竹志(城崎啓) 堀江勇気(花里文雄)  菅原ゆうき(林祐之)  浜崎大介(飯村桂吉)  中川義文(小西兼夫) 今仲ひろし(村上重吾)  山田裕(矢野哲次郎)  三坂賢二郎(千葉順)  風太郎(新聞記者) 以上ピッコロ劇団
越智浩太(新聞記者・学生)  河本翔伍(新聞記者・学生)  国生拓也(新聞記者・学生)  坂口遼太郎(新聞記者・学生)  辻井彰太(山名靖:山名庄策の息子)  以上ピッコロ演劇学校卒業生
作:福田善之 演出:島守辰明(ピッコロ劇団)
美術=加藤登美子 照明=竹内哲郎(㈱ハートス) 音響=松尾謙(SOUND―1)
舞台監督=永易健介 演出助手=本田千恵子(ピッコロ劇団) 制作=森下知恵
【主催】兵庫県立尼崎青少年創造劇場
【協力】トム・プロジェクト
平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
一般財団法人尼信地域振興財団助成公演
前売開始 2月18日(土)〈全席自由〉
前売2000円 当日2500円
※整理番号付き自由席
※未就学児の入場はご遠慮ください。
※ピッコロサポートクラブ会員は各1割引(ピッコロシアターでのみ扱い)
http://hyogo-arts.or.jp/piccolo/event/detail/?id=193

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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