Aga-risk Entertainment『時をかける稽古場2.0』03/22-28駅前劇場

 Aga-risk Entertainmentは冨坂友さんが作・演出される千葉県の劇団です。『時をかける稽古場2.0』の上演時間は約2時間10分、休憩なし。初日に観られたのは(臨場感があって)幸運でした。

 初演の『時をかける稽古場』は動画で全編見られるようです。

 「CoRich舞台芸術まつり!2017春」の審査員として拝見しました(⇒102本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載しました。 

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
―待ってられない 台本がある。
超遅筆な脚本家率いる若手劇団「第六十三小隊」は、勝負をかけた公演を二週間後に控えながら、
台本が1ページも無いという危機に瀕していた。
ある日、稽古場にて偶然タイムマシンを発見した劇団員達は起死回生の策を思いつく。
それは「本番前日まで行って、完成した台本を取ってくる」というものだった…!
 ≪ここまで≫

 本番2週間前に台本が出来上がっていない、いや、1ページも満足に書けていないという修羅場で、小劇場劇団の劇団員たちが、公演初日を迎えるために奮闘します。稽古場の部屋で偶然見つけた“タイムマシン”で、本番前日に飛ぶというタイムトラベルもののコメディーです。

 時間旅行、並行世界などのSF題材を生かした現代の娯楽作で、人間ドラマも織り込んでいることに好感を持ちました。作・演出の冨坂友さんの経歴を拝見したところ、黄金のコメディフェスティバル2014、2015において最優秀脚本賞を受賞されています。初演を経た再演で、戯曲はかなりブラッシュアップされていたのではないでしょうか。

 俳優のボケ・ツッコミの呼吸があざとく感じられたり、物語の仕組みを説明するためのやりとりが多かったこともあって、私は笑えなかったですが、初日のほぼ満席の客席からは笑いがよく起こっていました。

 ここからネタバレします。

 額縁舞台の全面を覆うスクリーンに文字映像が映写されます。転換を見えなくしたり、場面の日時を明示したりする、大切な役割があります。開幕してすぐに流れたキャスト、スタッフ紹介のオープニング映像は、初演と同じデザインだったようです(動画で確認しました)。キャスト紹介の文字映像をスクリーンに映写するだけの演出は、久しぶりに拝見し、懐かしい気もしました。オープニング映像については、その前と後で場面の変化がほとんどなかったので、なくても良かったのではないかと思いました。

 登場人物は本番2週間前(3月)と本番前日(4月)を行ったり来たりします。3月のAさんが4月に行くと、代わりに4月のAさんが3月に飛ばされるという設定です。中盤ぐらいまで舞台は3月のまま。3月の人々全員が4月に移動してからは、舞台が4月になります。それだけで終わらず、5年後の人々が4月に戻ってくるのが面白かったですね。そして“タイムマシン(選んだ時代に飛ぶ)”だと思っていた黒いガムテープが、実は“もしもボックス(望んだ場所に飛ぶ)”だったと判明するくだりも、よく練られた仕掛けだと思いました。事前にホワイトボードに“ドラえもん”の絵を描き、“タイムマシン”と“もしもボックス”の話題を前振りしていたことも理解の助けになりました。舞台右奥のドアがピンク色なので“どこでもドア”に見えるのも遊び心があって良かったです。

 3月の世界では客演のハマカワ(ハマカワフミエ)がインフルエンザを発症したために公演中止になって、5年後には劇団は解散してしまっていました。4月に移動していた3月の人々は、色んなすったもんだと議論の末に、全員で3月に戻ろうと話し合います。でもハマカワだけは「自分がこのまま4月にいれば、インフルエンザ発症の時期がズレて、公演は中止せずに済む」と主張し、1人だけ4月に残ると言い出します。それに対して3月の人々は「全員一緒に居ること、このメンバーで稽古して本番を迎えることが重要なのだ」とハマカワを説得しようとします。ハマカワフミエさんの演技に説得力があり、彼女が本気で4月に残りたいと思っていること、つまり、公演を中止にしたくないという強い気持ちが伝わってきました。議論に真実味と迫力がある、いい場面でした。

 3月と4月は異なる世界であって、同じ時系の数直線上にあるわけではない。だから、3月の仲間と4月の仲間は違う集団である。それがしっかりイメージできるようになった時、舞台上で同じ名前の複数役を演じる俳優が、その人数分の違う人物に見えてきました。演劇は集団創作で、過程(稽古)の時間の充実度や人間関係がそのまま本番に反映されます。それをよく知っている演劇人だからこそ、描けたドラマだったのだろうと思います。残念ながら、手前みそでお涙頂戴の雰囲気もわずかながら感じられ、引き込まれるほどにはなりませんでした。

 中盤かその前あたりで、複数の出演者が、床に貼った黒いビニールテープを剝がしていたのが気にかかりました。必要に迫られてもいないし、“タイムマシン”である黒いビニールテープは「1個しかないから貴重だ」という話題も出ていたのに、勝手に無言で剥がしてゴミにして(なきものにして)しまっていたんです。おそらくですが、3月から4月へと場面転換した際に、4月の床に貼られていないはずの黒いビニールテープが残っていたら、矛盾するからではないかと。些細なことなのでスルーできればよかったんですが、疑問とともに強い印象が残ってしまいました。込み入った設定を完璧に成立させるのは難しいものだなと思いました。

※作・演出の冨坂友さんがクチコミに対するコメント覧でご説明くださいきました。

・「一度貼ったビニテはタイムマシンとして無効」というルールが明示されている
・使用済みで“ただのビニテ”と化しているものを剥がしてゴミにするのは自然な行動
・稽古の邪魔になるので剥がさない方が不自然

なぜ私はあの行動を不思議だと思ったのか、記憶をたどってみました。私には、彼女たちが稽古をするために黒ビニテを剥がしている風に見えなかったのかもしれません。“稽古をしたい”よりも、“ビニテを剥がしたい”という方の動機を受け取ったのだろうと思います。

私が脚本の細部まで理解できておらず、失礼いたしました。加筆することで訂正させていただきます。ご親切に感謝いたします。ありがとうございました。
(2017/03/27 高野しのぶ)

≪東京、京都≫
出演:淺越岳人、榎並夕起、鹿島ゆきこ、熊谷有芳、甲田守、塩原俊之、沈ゆうこ、津和野諒、前田友里子、矢吹ジャンプ(ファルスシアター)、【以上、アガリスクエンターテイメント】、さいとう篤史(ジョナサンズ)、斉藤コータ(コメディユニット磯川家)、ハマカワフミエ
脚本・演出:冨坂友 文芸助手:淺越岳人 演出助手:倉垣まどか 音楽:三濱徹也
舞台監督:大地洋一 舞台美術:袴田長武 照明:山内祐太(東京) 音響:安藤達朗(東京)/下田要・石田泰司(京都) 劇中映像:ピエール 舞台写真:石澤知絵子 宣伝美術:蒔田桃菜 制作:佐伯凛果 制作協力:杉山純じ(東京)/小林大陸(京都)
主催:アガリスクエンターテイメント 共催:NPO法人フリンジシアタープロジェクト
【発売日】2017/01/14
事前清算していただいた方は事前精算ありがとうセットをプレゼント!
【チケット料金】
一般料金…3800円(自由席)
当日料金…3800円(自由席)
前半・平日昼料金(☆)…3300円(自由席)
高校生料金…500円(自由席)
ペア料金…5000円(自由席)※1
富豪席…5,000円(指定席)※2
※1
前売り券、予約のみ有効、当日ペアに変更などもできませんのでご了承ください。
ヤフー、こりっち…1枚で2名様のご予約となります。
カンフェティ…1枚2500円、2枚セットで必ずご購入お願いします。
万が一、1枚購入の場合は差額を当日いただくことになります、ご了承ください。
※2
前方中央ブロック良席指定。
上演台本+写真(集合写真+希望キャストのサイン入り舞台写真)つき。
前売券(事前精算)限定。
【割引】
リピーター割引…1000円引き
本公演のチケットの半券を提示
大貧民割引…1000円引き
受付で「大貧民です」とご申告頂いたお客様は1000円キャッシュバックいたします。
貧民割引…500円引き
学生割引…500円引き
http://tokikake2.agarisk.com/?page_id=474
http://www.agarisk.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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