日本俳優連合「日俳連パワーアップセミナー1~アメリカの最新演劇状況を聞く会(講師:ペイジ・プライス)」03/19芸能花伝舎A-1

 日本俳優連合が主催する、米国の俳優、演出家のペイジ・プライス(Paige Price)さんの講座を拝聴しました。通訳は中山夏織さん。朝10時から12時まで、充実の内容でした。

 プライスさんはAEA(アメリカ俳優組合エクイティ Actors’ Equity Association)の第一副会長でいらっしゃいます。5万人を超える会員はプロの舞台俳優と舞台監督です。俳優の仕事の契約形態や組合の運営方法について具体的に知ることができました。

 以下、私がメモした内容です。申し訳ございませんが、正確性は保証できません。間違いはあると思います。ご了承の上、お読みいただければと思います。

≪詳細≫ facebookイベントページより
アメリカ俳優組合エクイティの第1副会長ペイジ・プライス女史が来日します。『トニー賞コンサートin Tokyo』の演出のためですが、その貴重な時間をお借りして、セミナーを開催します。

ブロードウエイやオフブロードウエイのこと。
俳優修業は、どのように行われているの?
オーディション情報はどのようにしてキャッチするの?
出演の条件は? 
エージェントとの関係は?
etc.

アメリカの俳優がいかに仕事をするのかを、お話しいただきます。

講師 ペイジ・プライス
俳優・演出家
オフ・ブロードウェイ、ブロードウェイ、地域劇場で幅広く俳優として活躍の後、テレビ・演劇のプロデューサー、演出へと活動を広げる。2008年、コロラド州アスペンの地域劇場シアター・アスペンのエグゼクティブ・ディレクター兼芸術監督に就任、芸術面のみならず運営面でも才能をふるう。ミュージカルシアター連合副会長、トニー賞ノミネート委員会委員等、要職を務める。また、2006年以来、会員(俳優・舞台監督)数5万人を超えるアメリカ俳優組合エクイティの第1副会長。

主催 日本俳優連合
≪ここまで≫

●歴史

 AEAは俳優(俳優、ダンサー、シンガー含む)、舞台監督が加盟する労働組合(Union)。会員は現在50,000人以上。年齢もキャリアもさまざま。近年は俳優は小さなビジネスマンであるという認識が広まっている。たとえばSNSを駆使してツイッターのフォロアーを増やすなど、アーティストとビジネスマンの両方を兼ねている。俳優が自分のフィクション(偶像)を作り上げる。AEAは俳優の声を代弁し、アーティストであり、ビジネスマンである俳優を守る。組織には「若い俳優」「女性」などをテーマにした色んな委員会がある。役員はボランティア(無報酬)。

 AEAは100年以上前に始まった。たとえば3か月間リハーサルしても公演が実現しないと俳優は無報酬。俳優が衣装代を払っていた。ツアー公演が途中で終了するとその場で解散し、俳優には家に帰る旅費さえ出なかった。そういう状況を改善するためストライキを決行したのが始まり。1969年(たぶん)に年金を支出させるためにストライキを行ったのが、第二の大きな転機だった。
 
 ロサンジェルスはテレビ、映画の仕事が多く、舞台の仕事が少ない。でも俳優は舞台に出ることで技術を磨いておきたいから、破格の安い報酬(たとえば無報酬)で舞台に出る場合があった。たとえば「趣味」として出演したり。AEAはそれを認めたくない。30年にわたって議論してきたが、2年前にやっと俳優側が折れた。AEAの会員である俳優が無報酬で舞台に出ることは認められない(ただし自主公演を除く)。

 トランプ氏が大統領になったことは誰にとっても朗報ではない。彼は芸術助成(Arts Funding)をカットすると言った。だからAEAの会長(たぶん)はワシントンDCに行って、芸術は文化だけでなくビジネスにも貢献するというスピーチを行った。たとえば先日のWomen’s MarchもAEAが関わっている。AEAは数の力で文化の重要性を訴え、芸術性を擁護する大きな力になっている。このように、「ちゃんと昼休みを取らせてください」といった小さなことから、大きな政治的な活動まで、業務は幅広い。

 AEAの仕事は、俳優の仕事のタイプを明確にすること。プロデュース側にどんな仕事が望まれているのかも明らかにする。公演の予算も重要な情報。俳優の給料は公演規模に左右されるため。俳優自身がつくる仕事(自主公演)の場合は、俳優が無報酬のことはある。

●AEAと俳優との関係

 AEAは俳優には自分たちで(仕事を、公演を)することを奨励している。プロデューサーに見てもらう機会は多い方がいい。地域によってはAEAと労働協定を結んでいる劇場が少ない場合がある。昼間は他の仕事をして、夜に稽古、本番があるという俳優も多い(日本と同じ)。「Real Life(昼間), Real Job(夜間)」とよく言う。

 人生かけてやっている仕事なのだから、なるべく認知を上げるようにと指導している。Playbillになるべく情報を載せるように、など。

 大学でトレーニングを受けた俳優が年間で数千人、卒業と同時に業界にデビューしてくる。競争率は激しくなっている。劇作家もそうだけれど、大学卒しか認められない状況は不公平(家庭の経済状況の面でも)。だから学歴に関わらず、仕事で何を求められているのかを俳優に教えるのもAEAの仕事。

 契約をする際、何事も秘密裏(confidentially)に行われてしまうことが多い。口約束とか。プロデューサーと俳優が1対1で交渉しなくていいように、AEAが存在する。

●現在の活動の具体例

 100年以上の歴史があるので、契約書はとても分厚くなった。たとえば「テレグラム」という単語がまだあったり。なので細かく更新していっている。時代の変化が早い。舞台芸術(Live Theater)を守るために、数多くのチャンネル(映像、テレビ、CM、ネット動画など)と、一緒に活動する。

 ブロードウェイミュージカルの大ヒット作『ハミルトン』『ブック・オブ・モルモン』などは、俳優に報酬の他、健康保険、年金、住宅などが保証される一番上の契約レベル。『ハミルトン』はワークショップを多数おこなって創作した。だからメインの出演者たちは報酬を増やすよう要求している。
 ツアーが決まったら興行収入の1%を俳優に渡すなど、新しい契約も生まれきている。ヒット作が生まれるとツアーが決まっていく。だから最初の契約ではなく、後から俳優に報酬を払う仕組みもある。

 「Fair Wage(公正な報酬)」がキャッチコピー。有名俳優が「オーディションに行きたかったのに、ウェイトレスをしていたから行けなかった」といった発言をするCMを流して、認知されてきた。草の根活動。

 家族を養う必要があったり、女性だったり、出産したりすると、俳優を続けられなくなる。俳優がAEAに要求することも出てきた。場合によっては「今の報酬より40%上げろ」とAEAがプロデューサーに言わなければならないことも。それはとても難しい。何度も話し合いを持っている。

 俳優がアーティストであることと、【失念 たぶん“普通の生活”といったこと】を守るのが組合の仕事。団体協約は条件(condition)だけでなく俳優の威厳(dignity)を守ることでもある。AEAの仕事は最良の結果を生むために、最低限の状況を得ること。AEAはプロデューサー側に「報酬をちゃんと払って」「きちんと休ませて」「安全に仕事をさせて」と要望する。

●オーディション/エージェンシー

 オーディションの方法について。プロデューサーがキャスティング・ディレクターを雇う。キャスティング・ディレクターがエージェンシー(俳優が所属するマネジメント事務所)にオーディション情報を流す。その際、AEAにもその情報が届く。それはイクイティー(AEA)・オーディションと呼ばれる。会員である俳優なら誰でも閲覧できる。イクイティー・オーディションはインターネットから申し込み可能。昔は申し込むために朝早くから並ぶこともあった。

 エージェンシーには「俳優の報酬の10%までしか取ってはいけない」という法律がある。ただし、マネージャーはそれに該当しない。エージェントに入れない俳優がマネージャーを雇う場合は、10%までという制限がないので、契約次第になる。エージェントに入っていて、さらに売れてきた俳優が、自分でマネージャーを雇うケースもある。ロサンジェルスでは30年前は俳優を紹介するショーケース(showcase)が行われ、エージェントが観に来てくれていたが、今はもう下火。映像をインターネットにアップロードするのが主流。

 最近は写真、動画のネット公開がデフォルト。小さい金額だけれどMedia Feeを契約に組み込んでいる。それでプロデューサーは俳優の写真や動画を自由に使うことができる。いちいち俳優に確認する手間が省ける。

●AEAについてのより具体的な情報

 AEAへの加盟方法
 ・俳優としての仕事を得た時
 ・大学を卒業し、NYのショーケースに出た時
 ・AEAと契約している劇場が行うオーディションに出て仕事を得た時
 ・実績(credit)を積めば加入できる
  =EMC(Equity Member Candidate・AEAメンバー候補者)になる。 

 AEA会員の俳優には最低限の賃金(保険、年金も含む)が保証されている。EMCにはそれがない。だから公演の予算によってはAEA会員とEMCの人数をバランスよくキャスティングすることもある。EMCの賃金は安くてすむから。EMCは公演に出ることでクレジットが貯まる。EMCになってだいたい10~50週間でAEA会員になる。

 傷害保険について(会場から質問あり)
 ・プロデューサーが保険に加入する
 ・保険料の支払いもプロデューサーが行う

 AEAの会費
 ・入会時に1100ドル(約12万円)
 ・118ドル/年(約1000円/月)
 ・仕事が決まったら報酬の2.5%をAEAに支払う

 AEA会員のうち、常に仕事があるのは全体の15%。
 中には季節労働者(シーズンごとの契約)の人もいる。
 メンバーではあるがメインの仕事がテレビ、映画の人もいる。
 
 AEAは舞台の組合で、他にもテレビ、映画の組合がある。その他はこちら。
 ・AGMA:オペラ歌手
 ・AGVA:バラエティー、ヴォードヴィル、Rockets(ラインダンス)

 エキストラについて(会場から質問あり)
 質問:日本は映画やテレビでエキストラを一般募集することが多くなった。昔は俳優に声がかかり、安い報酬でも仕事になった。アメリカはどうか?
 プライス:アメリカではエキストラの力は大きくなっている。まずエキストラ専門の組合ができた。今はそれが映画・映像専門の組合と合併した。

 大卒俳優の種類:
 コンセルヴァトワール系(演劇専門大学)とリベラルアーツ系(大学文学部)の違いがある。専門大卒はスキルがある。文学部卒は文学的な学びをしてきた俳優で、市民として全体像を理解している。自分はNYUを中退したので(在学中に仕事を得たため)、履歴書に大卒とあると羨ましいな~と思う(笑)。

●若者(一般&専門)と劇場

 私の劇場にはインターン制がある。対象は全米の学生。たとえば夏休みの1か月間。旅費、住居、食費、そしてEMCのクレジットが得られるので、演劇大学の学生はぜひやって欲しい。学生が自分から4000ドル払うようなものもあるが、劇場はインターン制をもっとやるべきだ。

 ブロードウェイにはKids Nightという企画がある。チケットが安くなる。公的助成を受けている劇場は必ず教育プログラムを実施している。補助金で運営されることもある。「Theatre for Young Audience」という枠組み。たとえば全国ツアーがあったら、組合も劇場も俳優も協力する。

 学校での上演機会は減っている。アメリカも若者が劇場に行くのが難しい。到達したいゴールはプロデューサーも俳優も同じ。だからデジタル環境が必要不可欠。仕事と世界とをつなげる必要がある。

●日本と米国

 『トニー賞コンサートin Tokyo』では2日間で数十曲歌うコンサートの演出・稽古をした。出演者は米国から2人と日本から2人。朝9時から夜21時までという長時間労働で驚いた。米国だと8時間で終える(俳優は自主的に仕事を切り上げる)。だからなるべく俳優に時間を取らせないようにした。歌を歌うので、のどの心配もある。井上芳雄さんはブロードウェイ作品だけでなく、とても小さなミュージカル作品もよくご存じで驚いた。

●プライスさんの現状についての見解

 私自身はブロードウェイよりもオフ・ブロードウェイの方が好き。新しい作品はリスクを冒すからこそ、豊かなものになる。

 組合内で仲間を作ることに興味がある若いメンバーが増えている傾向がある。組合のメンバーと飲みに行くなど。でもそれは我々の目的・使命ではない。我々にとって大事なのはプロデューサーと交渉すること。

 今は経験よりも大きな声(Loud voice)と情熱(passion)が重視される傾向がある。変化が早く、短い期間の展望しか持てない。長期展望をもって、ゆっくりと変化していくべき。

●プライスさんから俳優へ

 自分自身に投資していることが大事。アーティストであり、優れた市民であるといい。そして、それが認知されるようにすること。自分という俳優は、社会の人々の生活をよくするものだと、他者に認知されること。そんな俳優の最低限の生活を叶えたい。

Guest Speaker:Paige Price
参加費 1,000円(逐語通訳付き)
定員 50名。必ず事前にお申し込み下さい。
電話 03-5909-3070
ファックス 03-5909-3071
http://www.nippairen.com/
https://www.facebook.com/events/371953906519336/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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