【稽古場レポート】ワタナベエンターテインメント・Dステ19th『お気に召すまま』10/04都内某所

 ワタナベエンターテインメント所属の俳優集団D-BOYSの新作演劇公演、Dステお気に召すまま』の稽古場に伺いました(⇒過去の稽古場レポート)。

 青木豪さんがDステの演出を手掛けるのは3度目で、どれもシェイクスピア喜劇です。過去の公演(レビュー⇒)が面白かったので、チラシに寄稿させて頂きました(⇒報告エントリー)。

 ●ワタナベエンターテインメント・Dステ19th『お気に召すまま』 ⇒公式サイト
 ≪東京、山形、兵庫≫
 東京会場:本多劇場
 公演期間:2016年10月14日(金)~30日(日)
 出演(台本の登場順):柳下大 石田圭祐 三上真史 加治将樹 西井幸人 前山剛久 牧田哲也 遠藤雄弥 松尾貴史 鈴木壮麻 大久保祥太郎 山田悠介
 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出・上演台本:青木豪
 ⇒CoRich舞台芸術!『お気に召すまま

 ≪あらすじ≫などは公式サイトでご確認ください。読んでから観に行っても楽しめると思います。

 本多劇場の舞台の実寸がほぼ取れる稽古場でした。なんと客席通路スペースまで確保!仮の装置も建て込まれ、音響だけでなくバイオリン、ギターの生演奏もあるという贅沢な環境です。私が伺った日は朝11時から夜19時までというスケジュールでした。青木さん曰く「(留学中の)イギリスでは稽古は10時から17時までだった。夜は観劇にも行けるし、健康的だから」とのこと。※私は11時から17時半ごろまで見学させていただきました。

 『お気に召すまま』は出演者が全員男性(オールメール)で、男性が女性を演じることを生かす工夫がたっぷり。また、ある女性の登場人物が男装をして男性の振りをするため、二重に性別が逆転するのがとても面白いです。演じ分ける際の柔軟さ、俊敏さが肝で、「ここは女の子でやってみて(男の子と女の子の演技を頻繁に切り替える)」「厚木のスケバンみたいに」など、青木さんの提案は細かくて斬新です(笑)。

【写真(左から敬称略):柳下大、前山剛久】
【写真(左から敬称略):柳下大、前山剛久】

 青木さんは『お気に召すまま』を“一点の曇りもない喜劇”と評されており(⇒引用元)、笑えるところはひとつも取りこぼさず、舞台に乗せようとされているご様子。もちろん笑いにこだわるだけではなく、物語を伝える演技についても丁寧に指摘されます。各俳優に合わせた説明の仕方で、優しく指導をされていました。

 青木:ムードだけにしないで。そこで行われてる会話をちゃんと見せて。ちゃんと相手を受けて。お互いにやり合うことを忘れずに。
 青木:ディテールに“芝居の神様”が降りてくるので、細かいところをちゃんとして下さい。
 青木:人生は常に新鮮だから! (演技も、稽古も、常に新鮮に) 
  ※↑演出助手の山﨑総司さんも同時におっしゃっていました。

 D-BOYSの方々は相手役と事前相談して、演じる度に新しいアイデアを提示していきます。自分の出番でない時も客席スペースに座って“お客さん”の役割を果たすなど、常に積極的に稽古に向き合われていました。お芝居にある“動物”が登場するのですが、ちょっとした休憩の時間に、その鳴き声を自主的に真似て練習する声が響いた時には、少し感動しました。
 加治将樹さんが自分から小道具を用意して実践したアイデアが採用されたのを見て、私から青木さんに質問をしてみました。

 ―D-BOYSの方々が次々に新しいアイデアを出して、積極的に演技を試してらっしゃいます。これはD-BOYS内の常識なのでしょうか?それとも青木さんの指示ですか?
 青木:Dステは、自分から方向性も伝えますが、まず出演者にやってみてもらうスタイルです。加治くんと三上(真史)くんが3回連続で出演してて、その姿勢が後輩たちに伝わってるんじゃないかな。

【写真(左から敬称略):牧田哲也、西井幸人、前山剛久】
【写真(左から敬称略):牧田哲也、西井幸人、前山剛久】

 私事ですが、ちょうどセゾン文化財団ニュースレターviewpoint・Vol.76で前川知大さん(イキウメ)の寄稿「プロフェッショナルとアマチュアの違い」を拝読し、小劇場界で活動するフリーの若い俳優と芸能事務所に所属する若い俳優について考えていたところだったんです(viewpoint・Vol.76は後日、公式サイトで無料公開されると思います)(⇒公開されました・2016/10/06)。D-BOYSの全員が出演できるわけではないし、ジャンルも様々ですが、Dステは今回で19回目を迎えます。2007年から継続している「劇団」のようだと思いました。

 今公演の総合プロデューサーである渡辺ミキさん(ワタナベエンターテインメント代表取締役社長)にもお話を伺うことが出来ました。

 渡辺:俳優はアイデアをいくつも持って、提案すべき。若者は「言われたことは何でもやります!」という姿勢になりがちだけど、そうじゃないと教えています。映像でも舞台でも仕事を取って来られるのは、ある意味“便利”な人材。自分から複数のアイデアを出せば、そのうち1つは採用されるかもしれない。もしアイデアが的外れでも、その姿勢は現場で感謝されると思う。俳優は依頼されないと仕事ができないから、「またこの人と仕事をしよう」と思ってもらえるかどうか。

 ※渡辺社長も稽古中に「笑い」を生む演技について提案をされ、採用されていました。さすがは「笑い」に詳しい(そして厳しい)ワタナベエンターテインメントの現場だと思いました。

【写真(左から敬称略):柳下大、前山剛久】
【写真(左から敬称略):柳下大、前山剛久】

 観客が自然に笑って、本気で楽しめるのは、舞台上の俳優も新鮮に、本気で楽しんでいる時。そのことがしっかり共有されている座組みだと思いました。実は、恋の切なさ、甘酸っぱさ、愚かさ、崇高さを伝える場面に、ウルっと来ちゃったんです。心のベクトルを常に客席の方へと向けてくださっていることを、嬉しく、頼もしく思いました。歌も踊りもある、超ハッピーなドタバタ祝祭劇を見せてくれそうです。

 渡辺:今回の公演には高校演劇部の方々をご招待しています。自分自身も若い頃に新劇の劇団の公演を観て、それが糧になったので。楽しくて笑える娯楽作です。この機会に是非ご覧ください。

 ■ネット上の記事(2016/10/05時点)

 ■キャストの方々より

(稽古場写真は主催者よりご提供いただきました)

【出演】
オーランドー:柳下大
アダム/ウィリアム:石田圭祐
オリヴァー/コリン役:三上真史
チャールズ/ジェイクイズ:加治将樹
シーリア:西井幸人
ロザリンド:前山剛久
タッチストーン:牧田哲也
ル・ボー/オードリー:遠藤雄弥
フレデリック公爵/前公爵:松尾貴史
アミアンズ/ハイメン:鈴木壮麻
シルヴィアス:大久保祥太郎
マーテクスト/フィービー:山田悠介
ヴァイオリン:Dr.Bennie
鍵盤ハーモニカ・ギター:西出和真
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出・上演台本:青木豪
音楽:笠松泰洋
美術:長田佳代子
照明:杉本公亮
音響:青木タクヘイ
衣裳:宮本宣子
振付:広崎うらん
殺陣指導:渥美博
ヘアメイク:馮啓孝
演出助手:山﨑総司
舞台監督:筒井昭善
宣伝美術:末吉亮(図工ファイブ)
宣伝写真:坂田智彦、菊池洋治(TALBOT.)
宣伝衣裳:牧野iwao純子
宣伝ヘアメイク:馮啓孝
宣伝:大澤剛 櫻井麻綾
制作:馬場順子 加藤美秋
制作助手:金原佳央里
制作デスク:西川陽子
総合プロデューサー:渡辺ミキ
票券協力:〔東京〕サンライズプロモーション東京
主催:〔東京〕ワタナベエンターテインメント
〔山形〕山形県・公益財団法人弦地域文化支援財団
〔兵庫〕兵庫県/兵庫県立芸術文化センター
企画・製作:ワタナベエンターテインメント
東京公演 一般発売:2016年8月7日(日)10:00開始
料金:一般 7,000円(全席指定・税込)
召しませシート6,000円(全席指定・税込)※限定枚数 対象公演…10月14日(金)19:00公演、10月17日(月)19:00公演、10月18日(火)14:00公演
※未就学児入場不可
http://okinimesumama.dstage.jp/

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