【稽古場見学】葛河思潮社『浮標(ぶい)』の稽古場(ゴーチ・ブラザーズ新スタジオ)に伺いました

『浮標』チラシ
『浮標』(再々演)チラシ

 ゴーチ・ブラザーズ自社スタジオを持ったと知り、新しい拠点を見学に伺いました。ちょうど長塚圭史さんが演出・出演される葛河思潮社『浮標(ぶい)』の稽古中で、幸運なことに、制作室から少しだけシーン稽古を拝見することができました。

 三好十郎作、長塚圭史演出『浮標』は葛河思潮社で2011年、2012年に上演され、今回が3度目になります。8月から9月にかけての全国7か所ツアーです。
 私は過去2度の上演の両方で、メルマガ号外を発行しました(⇒)。2度目は「再演舞台を観て語らう夕べ」というイベントも開催し、その世界にどっぷりハマったファンの一人です。

 ●葛河思潮社 第五回公演『浮標(ぶい)』
 08/04-07 KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ
 ≪神奈川、愛知(豊橋)、兵庫、三重、福岡(北九州)、佐賀、東京≫
  出演(戯曲配役順):田中哲司 原田夏希 佐藤直子 谷田歩 木下あかり 池谷のぶえ 山﨑薫 柳下大 長塚圭史 中別府葵 菅原永二 深貝大輔
  作:三好十郎 演出:長塚圭史
  ⇒公演スケジュール・チケット詳細
  ⇒戯曲は青空文庫で公開されています。
  ★KAAT神奈川芸術劇場と横浜中華街とのタイアップ企画あり!⇒対象店舗&サービス詳細

≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
死にゆく妻、迫り来る戦争の影─。
芸術にも、宗教にも、科学にも、経済にも頼れない中で、画家・久我五郎が見せる「生」への執着。
4時間に及ぶ三好十郎の傑作戯曲が、この夏3度目の上演!

夏も終わりの千葉市郊外の海岸。洋画家の久我五郎は結核を患う妻・美緒の看病に明け暮れている。
生活の困窮、画壇からの圧力、不動産の譲渡を迫る家族……など苦境の中で妻の病気は悪化していく。
戦地へ赴く親友の訪問を受けた数日後、献身むなしく美緒の容態が急変。
その枕元で、五郎は必死に万葉の歌を詠み上げる─。
≪ここまで≫

 主演の画家、五郎役は初演、再演から引き続き田中哲司さん。画家の妻・美緒役は新キャストの原田夏希さんです。再演(2012年版)と比較すると出演者12人中、7人が新顔になっており、見知ったはずの場面に全く違う感触がありました。

 たとえば金貸しの尾崎役は赤堀雅秋さんから菅原永二さんに。周囲の状況を冷静に観察する菅原さんの居住まいは、乱暴なほど思いを表出させて、五郎にぶつけていた赤堀さんとは対照的です。病床にある美緒の妹役は大和田美帆さんから山﨑薫さんにバトンタッチ。大和田さんは両の目にあらわれる女性らしいしたたかさ、芯の強さが圧倒的でしたが、山﨑さんは小動物のような可愛いらしさをまといつつ、腹の底にある企みをにじませるので、小悪魔的な魅力があります。

 美緒役の原田さんは今までで一番、役の実年齢に近いそうで、まっすぐな視線と言葉が若々しくて可憐です。夫として上段にかまえる五郎が、動けない若妻の小間使いように見える瞬間もあり、3度目の主演で余裕も感じさせる田中さんが、原田さんに振り回される姿が愛らしく映りました。

 夫婦間の微笑ましい駆け引きや、悪意がひたひたと満ちる家族のやりとり、金貸しと貧乏人のシーソーゲームなど、シンプルな抽象舞台に浮かび上がるのは今も昔も変わらない社会の縮図です。自分勝手に激昂する姿が可笑しく、他者への無心の優しさに胸打たれ、短い見学時間でしたが、何度も泣き笑いしてしまいました。

【出演・戯曲配役順】初演→再演→再々演
 久我五郎(画家):田中哲司→田中哲司→田中哲司
 久我美緒(五郎の妻):藤谷美紀→松雪泰子→原田夏希
 小母さん:佐藤直子→佐藤直子→佐藤直子
 赤井源一郎(五郎の友人):大森南朋→平岳大→谷田歩
 赤井伊佐子(源一郎の妻):安藤聖→荻野友里→木下あかり
 お貞(美緒の母):峯村リエ→池谷のぶえ→池谷のぶえ
 恵子(美緒の妹):江口のりこ→大和田美帆→山﨑薫
 利男(美緒の弟):遠山悠介→木村了→柳下大
 比企(医師):長塚圭史→長塚圭史→長塚圭史
 京子(医師の妹):中村ゆり→高部あい→中別府葵
 尾崎謙(小金貸し):山本剛史→赤堀雅秋→菅原永二
 裏天さん(家主):深貝大輔→深貝大輔→深貝大輔

新スタジオ外観。稽古場は2階分の高さがあります。
新スタジオ外観。稽古場は2階分の高さがあります。

 さて、新スタジオですが、公演のための稽古だけでなくワークショップでも利用していくそうです。ゴーチ・ブラザーズはこれまでに俳優指導者の池内美奈子さんのワークショップ(告知⇒)、山中結莉さんのワークショップ(レポート⇒)、10月にBunkamura『るつぼ』が控える英国の演出家ジョナサン・マンビィさんのワークショップ(告知⇒)などを開催されてきました。継続的な俳優の訓練場、演出家との実験空間になるのかもしれません。その期待、大!!

 美緒の母、お貞役の池谷のぶえさんのツイート↓

 五郎の友人、赤井源一郎役の谷田歩さんのツイート↓

葛河思潮社 第五回公演『浮標(ぶい)』
≪神奈川、愛知(豊橋)、兵庫、三重、福岡(北九州)、佐賀、東京≫
出演(戯曲配役順):田中哲司 原田夏希 佐藤直子 谷田歩 木下あかり 池谷のぶえ 山﨑薫 柳下大
長塚圭史 中別府葵 菅原永二 深貝大輔
作:三好十郎 演出:長塚圭史
術:二村周作
照明:小川幾雄 山崎哲也
音響:加藤温
衣裳:山田いずみ
ヘアメイク:河村陽子
歌唱指導:門司肇
演出助手:山田美紀
舞台監督:福澤諭志
宣伝美術:BLOCK BUSTER NO DESIGN
写真:篠山紀信
Webサイト:matium
広報:吉田プロモーション
動画:飯田裕幸(レステック)
文:清田隆之
票券:小島侑香里
制作助手:涌井恵美子
制作:藤井良一 三浦瞳
プロデューサー:伊藤達哉
企画・製作:葛河思潮社
http://www.kuzukawa-shichosha.jp/bui/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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