iaku『エダニク』06/03-12三鷹市芸術文化センター

エダニク
エダニク

 『エダニク』は約1時間45分の男三人芝居。横山拓也作、上田一軒演出のコンビで3度目の再演となる人気作です。2009年初演で第15回日本劇作家協会新人戯曲賞を受賞。

 以前は約1時間35分だったこともあるそうで、今回は上演時間が約10分伸びています。台本は同じだけれど、3人のキャストのうち、2人が新しく変わり、演出も変わったからなんでしょうね。
 私はある部屋に集まる3人の男性の(人間としての)背景を、たった1人で無言で作業する演技や、相手の出方を積極的に待つ間(ま)などで緻密に描いているように思えました。

 iaku(イアク)の横山さんは昨年から東京と大阪の両方に拠点を持つようになったそうで、東京で活動する俳優との出会いの場を設けるそうです。詳細は公式サイトでご確認ください。

 【iakuが東京でも創作活動するために 俳優と出会うワークショップ開催】
 日時 2016年6月25日(土)①10:00~12:00 ②12:45~14:45 
 〆切は6月15日(水)24時。

 ご興味を持たれた方は、まず『エダニク』をご覧になると良いと思います。

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 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
「この建物の塀を越えた途端、どうしてウチの豚はモノになっちゃうんですか?」
「CATTLE」が「BEEF」に、「PIG」が「PORK」になる境目で、男たちの社会と労働を描く―。
2009年の初演時、その強度のある会話の応酬が高く評価され、
第15回日本劇作家協会新人戯曲賞を受賞した代表作『エダニク』の上演です!

とある食肉加工センター。ある日、屠室としつで厳重に管理されているはずの、牛の延髄が紛失。ここ、屠畜用ナイフ研磨室も人の出入りや情報の行き来が慌しくなってきた。この事件をきっかけに、初対面である取引先新入社員と加工センターの職人二人は、屠畜という作業への言及や、企業間の駆け引き、立場の保守など、各々のアイデンティティに関わる問題をぶつけ合い議論を白熱させる。立ちこめる熱気と臭気。「生」がたちまち「死」に、「生体」が次々と「物体」と化していくこの労働の現場で、男たちの日常は我々に何を問いかけるのか。
 ≪ここまで≫

 大量生産と分業について考えさせられました。食肉工場といえば大阪で生まれ育った私にとっては、小中学校の道徳の教科書でよく出てきたテーマでもあります。便利、手軽、効率的、コスト・パフォーマンスが良い…といった、もうインフラ化して長らく経ち、使い古された感もある言葉に、甘え切っている自分に改めて気づかされます。

 横山拓也さんのお芝居は最近だと『人の気も知らないで』『walk in closet』を拝見しています。『エダニク』でも感じたのは、人間同士が苛烈に衝突する場面があり、それがそのまま、そのものとして受けとめづらいこと。具体的に描写できなくて申し訳ないんですが、拮抗状態を生むためのセリフが書かれているような、作為的な感じが、うっすらとするのです。それが戯曲のせいなのか、演技、演出のせいなのかはわからないのですが…。

 そういうわけで個人的に絶賛とまではいかないんですけれども、『エダニク』は複数のテーマが絡み合う様と、その中で格闘する人間を描けている戯曲だと思いました。机とイスだけの空間で、勘所をシャープに決める演出も良かったです。

 ここからネタバレします。

 “新人(実は得意先の御曹司)”役の福谷圭祐さんが良かったように思います。もっと感情の振れ幅を大きくしてもいい気がしますが、変化のさりげなさが私好みでした。『walk in closet』でも印象に残っていました。何事にも動じないひょうひょうとした姿が共通点なので、全然違う役でも観てみたいですね。

≪東京、愛知≫
出演:緒方晋(The Stone Age)、村上誠基、福谷圭祐(匿名劇壇)
作:横山拓也 演出:上田一軒
舞台監督:青野守浩
舞台美術:柴田隆弘
照明:岡田潤之
音響:星野大輔(サウンドウィーズ)
演出助手:鎌江文子
宣伝美術・WEBデザイン:下元浩人(EIGHTY ONE)
宣伝写真:堀川高志(kutowans studio)
制作協力:徳永のぞみ
制作:笠原希(iaku/ライトアイ)
企画制作:iaku
三鷹公演主催:(公財)三鷹市芸術文化振興財団
知立公演主催:(一財)ちりゅう芸術創造協会 知立公演協賛:知立市・知立市教育委員会
【全席自由】(日時指定)
(整理番号付) 会員 前売2,500円・当日2,700円 一般 前売3,000円・当日3,200円
U-22(22歳以下) 前売1,500円・当日2,000円 高校生以下500円(前売・当日とも)
*早期観劇割引・平日マチネ割引の公演は、会員・一般のみ各300円引き。
*「U-22」及び「高校生以下」は、いずれも公演当日の年齢。
*中学生以上の方は公演当日に学生証または年齢が確認できるものをご持参ください。
・未就学児の入場はお断りします。
http://mitaka.jpn.org/ticket/1606030/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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